11月号 2024.11.1啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/
今回ご紹介するのはこちら。
「きょう、ゴリラをうえたよ 愉快で深いこどものいいまちがい集」(KADOKAWA)。思わず店頭で二度見したインパクトの強すぎるタイトル。表紙もゴリラが植えられているイラストで何だかシュールだ。
本書に収録されているのは、1歳~7歳くらいの子どもが口にした、面白くも感心してしまう言い間違いの数々だ。
小さい子の言い間違いはそれだけでも微笑ましいものだが、本書の面白いところはその言い間違いから、言語習得の最中にある子どもたちが言葉のルールをどのように推測しているのかを考え、普段大人が意識していない日本語の複雑な仕組みに注目してみようという視点にある。
例えば、まえがきに登場する2歳のお子さんはお菓子がないとき、「お菓子あんない」と言っていたそう。もちろん正しくは「お菓子ない」だが、これは動詞の後ろに「ない」をつければ「食べない」や「行かない」のように意味が否定形がわかっていたのでは、と著者は推測している。「ある」だけが例外なのである。
ここで問題。「コンビ行きたい!」と訴えたお子さんの言葉、どこに行きたいか分かるだろうか。ヒントは「格助詞」。
本書ではたくさん興味深い例が紹介されているが、その中でも特に私が気に入っているものを二つ紹介したい。
一つ目は「おすしのさんぽ」。寿司がトコトコ歩いている・・・? と一瞬不思議な光景を想像してしまうのだが、これは「回転寿司」の様子を表現した言葉。詩的で言葉選びが本当に可愛らしい。著者も言っているが、自分の知っている言葉で何とか状況を表現しようという姿勢が伝わる。
二つ目は「今日は麺が切れていまして・・・」という店員さんの言葉。この言葉を受けて、麺が切れててもいいから食べたい! と訴えたお子さんの反応に思わず納得してしまった。勿論在庫切れという意味で店員さんは言ったのだが、麺が短く切れていても問題ない、とお子さんは捉えたのだ。一つの言葉に複数の意味を持たせているが故に生じた勘違いである。
さて、冒頭で紹介したタイトルのゴリラの件が気になっている方もいると思うので、少しだけ補足しておく。勿論実際にゴリラを植えたわけではないのでそこはご安心を。発言した子が幼稚園に通っているのが少しヒントになるが、正直かなりの難問だ。
なお、この発言をした子には上の兄弟がおり、正解を見事言い当てている。素晴らしい推理力に脱帽してしまったのだが、詳細はぜひ本書を確認してみて欲しい。
子どもたちは大人の話を一生懸命聞きながら、自分が日常で使える言葉を増やしている。子どもの言い間違いには、言葉の本質が詰まっているのだなと実感できる1冊だ。おすすめ!
「「しやすい」の作りかた」
【サンマーク出版】
下地寛也/著
なんだか「読みにくい」文章、なんだか「住みにくい」部屋・・・普段何気なく生活を送っていると、周りが様々な「しにくい」であふれていることに気づく。
日々のストレスを減らし、「しにくい」を「しやすい」に変えるためにはどうすればいいのだろう。本書は「分け方」に注目する。
ピザが8等分になっていなかったら? また、部屋の境界があいまいで、共用スペースのある状態だったら・・・? 本書を読み進めていくと「しやすい」が実感できるとき、それは誰かが考え抜いた「分け方」が実践されているのだと気づかされる。
多くの「しにくい」を多くの「しやすい」に変え、「生きやすい」につなげるための具体的な思考法。
≪今月の担当≫ 商品部 部長・郡山店 店長 佐藤篤志
休日に、昔読んだ物語のセリフを急に思い出し、本棚から少しくたびれた小説を取り出した。何年も前のことで、思い出したセリフがどこに書かれていたか思い出せず、結局最初から読み返すことにした。昔なら一言一句見逃さないように読んだが、今はセリフが気になって飛ばし飛ばし読んでいく。探していたセリフが目に入った途端、昔読んでいたその時の記憶がよみがえり、感じるはずのない匂いがした気がした。本とは娯楽、知識の伝達、情報の共有など、これ以外にもいろんな役割があるが、読んだ人の記憶の保存も確かにあると感じた。
店頭で耳にした親子の会話。「絵本じゃないから戻して」と諭す母親に、「役立つから!」と男の子が一生懸命説得していました。どうなるかなとしばらく見守っていたのですが、結局「小学生になってからね」という母親の言葉に男の子はしぶしぶ了承したようでした。
棚に戻された本のタイトルは「子どもは「この場所」で襲われる」。・・・なんと防犯意識の高いお子さんだろうか。
◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆
啓林堂書店ホームページ・外商部ページ( https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/ )にて、更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!
おすすめ児童書
『しぶがきくんがね‥』
【童心社】
とよた かずひこ/作・絵
「しんぱい ごむよう!」のおいしいともだちシリーズの新作です。
今回の主人公しぶがきくんは、誰も食べてくれなくて泣いています。
カラスやぶた、くまに食べてとお願いするけれど、やっぱり渋いから食べてくれません。
そこで、カラスが包丁さんにお願いすると・・・甘くておいしい干し柿に変身!
みんなで元気に「しんぱい ごむよう!」と言って、しぶがきくんを応援してね。
外商部おすすめの奈良本
『古代の酒に酔う』
【丸善出版】
庄田慎矢/編
11月20日発売予定
古代の人々はいかに酒を造り、それはどんな香りや味がしたのか。平城京長屋王邸宅跡から出土した木簡には、酒米や麹、仕込み水の比率などが記される。酒を仕込むための容器である須恵器甕を復元し、いざ古代の酒造りに挑戦。考古学や文献史学、微生物学など多分野の研究者や酒造家が結集し、世界各地の土器醸造にも目を向け、甕酒造りを再現する。
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