8月号 2025.8.1
啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/
タイトルに偽りなし。今回ご紹介する本は、「えげつない!寄生生物」(新潮文庫)だ。
本書は各章二部構成で成り立っている。冒頭部分は実体験のようなストーリー仕立てで寄生された宿主、もしくはその身近な目撃者の視点から寄生生物による宿主への影響や変化が語られ、本章部分で寄生生物の生態や寄生の目的が著者によって解説される構成となっている。いくつか例を紹介してみたい。
私たちの大敵、ゴキブリを子育てのための宿主として活用するのは、宝石バチ(エメラルドゴキブリバチ)という八チの一種だ。彼らはまず、宿主となるゴキブリを毒によって追いつめていく。
まず、宝石バチは毒によってターゲットとなるゴキブリの前肢をしびれさせ、彼らの自由を奪う。そうして動きの鈍ったゴキブリへ、今度は二度目の毒をお見舞いし脳の思考を奪うのだそう。
体と思考の自由を奪われたゴキブリは、宝石バチの言いなりだ。宝石バチに誘導されるがまま、彼らの巣穴へと連行される。ゴキブリはすでに自分の意思では抵抗することもできなくなっているため、連れてこられた宝石バチの巣穴の中で、ひたすらじっとしているのだそうだ。自らの脚に宝石バチの卵を産みつけられ、巣穴の出口を塞がれても・・・
三日ほど経った頃、宝石バチの幼虫は卵から孵り、ゴキブリの体に穴を開けて体内へと侵入する。栄養満点、新鮮なゴキブリの肉を内側から食べるためである。驚くべきことに、体内を好き勝手食い荒らされている間も、まだゴキブリは生きているのだそうだ。宝石バチの幼虫はそうして自らが蛹になるまでの間、ゴキブリが死なない程度に少しずつ肉を食べ進め、いよいよ蛹になるというタイミングまで生かしておくというのだからぞっとする。
なお、宝石バチをゴキブリ対策に活用できないか、とかつて考えた研究者もいたようだ。ただ、うまくはいかなかったらしい。その納得の理由は本書にて。
私たちにもなじみの深いアリ。小さいけれど働き者、そんなイメージの強い彼らだが、戦闘に特化したサムライアリの生態は少々異なり、知れば知るほどに恐ろしい。
戦闘に特化したサムライアリは、オスとの交尾を終えたサムライアリの女王がいきなりクロヤマアリの巣穴を急襲するところからコロニーづくりが始まる。異常な強さでクロヤマアリの抵抗を押しのけたサムライアリの女王は、巣穴の主であるクロヤマアリの女王を殺した後、自らがその女王になりすし、巣と家来をそのまま乗っ取る。
女王が成り代わっていることに気づかぬまま、クロヤマアリたちはサムライアリの卵の世話や食料の確保にいそしみ働くのだが、一生懸命育てている卵からは当然クロヤマアリは生まれてこない。だが、卵から生まれてくるサムライアリは戦闘に特化している種族のため、サムライアリの世話はできないのだそうだ。では、クロヤマアリの数が減ってくるとサムライアリはどうするのか――驚愕の手段については、ぜひ本書をご確認頂きたい。
他にもつがい二人三脚で托卵の成功率をあげようとするカッコウの話など、興味深い話が多数紹介されている。コマユバチにより操られ狂暴化したイモムシの話などは恐ろしくて、読んでいる最中思わずひっ! と声が漏れてしまった。おすすめ!
「日本列島 大地の成り立ち図鑑」
【文一総合出版】
北中康文/著 きたなかあい/マンガ 斎藤眞、小松原純子/監修
その地形は一体どのようにして生まれ、今の姿になったのか?
本書では、日本165か所の絶景を「火山がつくる大地」、「水がつくる大地」の二つに大きく分類し、豊富な写真と地図で解説していく。
四つの火山から誕生した富士山、石灰岩の大地にしみ込んだ雨が地下に流れ込んで生まれた鍾乳洞、岩なだれによって小高い丘になった流れ山など、絶景もだが地理の楽しさにも気づかせてくれる一冊となっている。三角州、扇状地の説明をスムーズにできないな、と思われた方はぜひ本書を一度読んでみて欲しい。充実のコラムにも要注目!
≪今月の担当≫ 外商部 社員 前田裕美
誕生日には決まってボーリングと、回るお寿司と、本屋へ行くことが我が家の恒例行事でした。夜の本屋は煌々と輝き、幼い私はどれだけ胸を躍らせたことでしょう。未だ見ぬ世界へと手を引いてくれるようで、ドキドキしたものです。 そしてすっかり大人になった今、ふいに手に取った本から、いつかの私や、あの時の景色、手触りなどに再び出会えることがあります。本屋では今日も、あちらこちらでそんな瞬間が待っているのではないかと考えると、また胸が躍るのです。
新潮文庫のステンドグラスしおりをようやくゲットしました。先日より夏文庫フェア目当てで店頭の文庫コーナーをうろうろしていたのですが、いざお店を出てみると、毎回フェアとは全く関係のない本を手に取ってしまっており・・・ ただ、思いがけない本との出会いが店頭で本を選ぶ醍醐味なので、楽しいし、これで正解! と毎回言い訳しています。
◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆
啓林堂書店ホームページ・外商部ページ( https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/ )にて、更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!
おすすめ児童書
『すずめばち』
【福音館書店】舘野鴻/作
「すずめばち」、怖い、危ない、逃げろ、などのイメージが強い虫です。 そんな力強いすずめばちを躍動感あふれる画で表現しています。 すずめばちにはいろいろな種類がいて、この本ではきいろすずめばちの生涯が描かれます。 女王ばち、働きばち、メスとオスの役割、おおすずめばちとの闘い、私たちの知らないすずめばちを教えてくれます。
外商部おすすめの奈良本
『奈良万葉』
【パイ インターナショナル】井上博道/写真 ピーター・J・マクミラン/翻訳9月12日発売予定
万葉集をテーマにした、日英バイリンガルの写真集が間もなく登場します。 奈良は、今からおおよそ1330年前に日本で最初に都が置かれた場所(現在の奈良県橿原市にある藤原京)です。かつて日本の政治の中心であり、工芸、芸能、食など多種多様な文化の発祥の地でもありました。なかでも『万葉集』という現存する日本最古の歌集は、現在の奈良県である大和を中心に奈良時代に編纂されたといわれています。 井上博道さんは、奈良に息づく『万葉集』ゆかりの風景を撮影してきました。やがてそのまなざしは、奈良を越え、他の土地で詠まれた歌の美しさにも惹かれるようになっていきました。本書には、そうした奈良県外で撮影された作品も4点収録しています。 静岡県の三保松原、滋賀県の琵琶湖、そして富士山。それぞれの風景が、遠い昔の歌とやさしく響き合いながら、本書のテーマを彩っています。奈良の本当の魅力がどこにあるのか。そのヒントが『万葉集』にあるかもしれません。
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