3月号 2026.3.2
啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/
今回ご紹介する本は、「変な心理学 バズっているアレの正体」(筑摩書房)。
著者によると、今の日本の「心理学」には、アカデミックな心理学と大衆的な心理学の混乱が見られるのだという。
例えばよく耳にする「行動心理学」。人の何気ない仕草や行動などから心を読む技術――というのは、大衆的な心理学がいうものであり、アカデミックな心理学では、行動心理学という学問分野がそもそも存在していない。
アカデミックな心理学では研究対象として行動を扱うため、行動心理学は心理学を指す言葉とほぼ同じになり、あえて行動心理学と呼び分ける必要性がない――というのがその理由のようだ。
このように行動心理学という名称一つとっても、表しているものが異なるという不思議な現象が起こっている。
アカデミックな心理学とは、行動や心の仕組みを科学的に明らかにしようとする学問である。実験を通して得られた人の心の動き、その結果が本書でも開示されている。
対する大衆的な心理学は、もっぱら人の行動から心を読む技術をあらわす。自分と他者の心をうまくコントロールし、実生活を向上させるためのテクニックだったり、性格診断のように自分の心の特徴をカテゴライズしたりと、心理学の研究とは縁遠い一般人にはこちらの方がなじみ深い。
アカデミックな心理学と大衆的な心理学はそもそもの質が異なっているのだが、いざ両者を比較してみると、質が違うのに一部重なる部分もある、という状況がより事態を複雑にしている。戸惑う著者の姿を見ていると、学術的な場で行われている心理学と大衆的な心理学の違いの大きさを感じずにはいられない。
本書で取り上げられている一例に「カラーバス効果」というものがある。
例えば占いで今日のラッキーカラーは赤、と目にすると、その日は街中のあらゆる赤が自然と目に留まりやすくなる。赤という一つの属性に注目することで思わぬ情報が目に入り、アイデアの種として活用されやすくなる、ということのようだ。
だが、アイデアの種を自動的に集められる裏ワザ、というのは大衆的な心理学の話。そもそも「カラーバス効果」は心理学用語ではない、という衝撃の事実が明かされる。複雑なのはここからだ。全く学術的な場での研究がされていないというのではなく、同様の心理現象が全く異なる名称で研究がされているという事実が明かされ――。
著者は心理学者という立場ながら、大衆的な心理学も楽しむ、というスタンスをとっている。大衆的な心理学を退けるのではなく、発展してきた背景を知り、その知識との向き合い方を考えるのである。
心理学における有名なテーマが本書では複数取り上げられているが、アカデミックな心理学との比較、状況を整理し把握することで、両者共存のための方向性が探られている。
サブリミナル効果、蛙化現象など、一度はどこかで見聞きしたことのある現象についても取り上げられているので、気になった方はぜひ一読してみて欲しい。
「ミイラの地下墓地から大脱出 生死を決める130の分かれ道 古代エジプトサバイバル」
【ライツ社】
フィリップ・スティール/作 岡本由香子/訳
小学校高学年から大人まで楽しめるゲームブック、ついに11刷決定! 舞台は3000年前のエジプト、ファラオと黄金が眠る王家の谷。読者は地下墓地に落ちてしまった主人公となって、地下からの脱出ルートを探る。 ゲームブックではあるが、細かく分岐ルートが用意されており、読み応えはかなりのもの。ルートを間違えると脱出できずに最初からやり直しになるので、根気と冷静な分析力、話の展開を読む力が必要だ。大人でもミスなくクリアするのは結構難しい。 読み進めていく中で、古代エジプトの知識が自然に身につくのが嬉しいところ。興味がわいた方はぜひチャレンジを!
≪今月の担当≫ 奈良店 店長 松井典子
海外のお客様からのお問い合せが、ずっと頭の中に居座っている。 「日本におけるドフトエフスキーにあたる作家はどなたですか」 ドフトエフスキー?日本における?…どなたですか? 社員2人で幾人かの作家の名前を捻り出してなんとかご案内したのだが…あの方はどうだろう…あの作品もそうかも…と、後から後から別の解答を探してしまう。不安になる。『罪と罰』も『白痴』も学生の時に読んだ。日本人作家だって、それなりの量を読んできたと思う。が、果たして本当に読み切れていただろうか。惰性で読書していたことはなかっただろうか。読み返すことなく本棚に眠る本たちともう一度向き合おう。そう思わせる出来事だった。
ようやく春の兆しが見えてきました。冬は電車の待ち時間に寒さに凍えながら本を読んでいたのですが、最近は苦でなくなってきて、嬉しく思う今日この頃です。
◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆
啓林堂書店ホームページ・外商部ページ( https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/ )にて、更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!
おすすめ児童書
『チューリップ』
【小学館】荒井真紀/作
チューリップは種ではなく、球根から育てます。 秋から土の中に植え、冬を越えて、春に芽が出て花が咲き、花が終わってからどうなっていくのか・・・ 精密な絵で成長の様子が理解できます。普段は見えない球根の縦割りの断面は玉ねぎみたいです。
外商部おすすめの奈良本
『旅×Scope 奈良』【JTBパブリッシング】JTBパブリッシング旅行ガイドブック編集部/編3月24日発売予定
国内旅行ガイドブックの新シリーズ「旅×Scope」が登場! ニッポンの解像度を上げて、いつもの何倍も充実した旅をしよう! 『旅×Scope』では、徹底取材をもとにした詳しい「観どころ」解説や、より深く、賢く、「観る」ためのコラムが充実。観光地の歴史や文化に精通した専門家(マスター)が、ガイド記事をさらに深掘り。 旅の前に本書を読めば、現地で見た時の感動がいつもの何倍にもなる&大満足できる。「観る」大人のためのガイドブックです。
【巻頭特集】 時代別に観る 美しき国宝仏像10選/奈良の古代へといざなう 宮殿遺跡と古墳/いにしえの風景が今に残る 万葉歌の舞台を訪ねて/この“旬感”に出会いたい フォトジェニック世界遺産
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