3月号 2025.3.3
啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/
「数学」という言葉を聞くと、真っ先に数式や記号の並びを思い浮かべてしまう。
いずれも日常とはかけ離れた問題を扱っているように感じてしまいがちなのだが、本書はそんな「数学」が、実は身近な日常、様々な身の回りのものの理解を深めるために役立っているのだということを示してくれる。
今回ご紹介するのは、「日常は数学に満ちている」(山と溪谷社)。
普段の日常と数学を結ぶ接点とは? 本書で取り上げられている例を、一部紹介してみたい。
月の満ち欠けは、月の一部分だけが明るく照らされることによって作り出されている。明るく見える部分は月の表面に太陽の光が届いているところ、暗く見えるところは太陽の光が届いていないところ、というわけである。
本書では三日月のイラストが例でいくつか紹介されているのだが、間違いがあると著者は指摘する。その判断基準とは? 三日月の正しい形をあなたも本書で確認してみて欲しい。
円筒形の透明な容器の中に入っている100本入りの綿棒。ここにも数学が隠れている。
この綿棒を一本ずつ取り出していくと、やがて均等に綿棒一本一本が傾き、円筒形の中央が少しくびれた形が出現する。(卓上の綿棒ケースを確認してみると分かりやすい。)
水平な平面の切り口が円、垂直な平面での切り口が双曲線になるこの形を、一葉双曲面と言うそうだ。日常に幾何学の世界が潜んでいると考えると楽しい。
なお、気になる疑問を著者が本書の中で投げかけている。この回転の向きはどうやって決まるのだろう? ちなみに私の手元にある綿棒ケースは、著者と同じく、中身は反時計回りに傾いていた。利き手による取り出しの向きによるもの? それとも・・・
なじみ深いおもちゃ、プラレールの話も登場する。レールの組み合わせで多種多様なルートを作れるのが一つの魅力なのだが、使えるレールの本数に縛りを設け、循環するルートが何通り作れるかをここでは問う。
本書には実際の路線パターンが図で示されているのだが――遊び尽くす前に自分の寿命が確実に尽きてしまうだろう。
他にも折り紙の展開図や、レターパックにできるだけたくさん入れることのできる入れ物の形、むいたりんごの皮の形など、興味深いトピックスが並ぶ。
数式や理論も紹介されているが、あくまで日常に潜む「数学」の発見がメインで、こんな風に数学的な視点から日常を見ると面白いんだな、という驚きを体験できる本になっていた。
本書を読み終えてから、著者の出している折り紙の本が今のところ気になって仕方ない。良書。
「発明が変えた世界史 ビフォーとアフターが一目でわかる」
【朝日新聞出版】
祝田秀全/監修 かみゆ歴史編集部/編
現代人は過去の様々な発明に囲まれて生活している。今では〈あたりまえ〉となった光景は、かつての発明が人々の生活を変え、社会に大きな影響を与えてきた結果なのである。
本書では、発明品が生まれたきっかけ、それにより歴史がどう変わったかを両開きのページで構成し、様々なトピックスを時代別に紹介していく。
題材は幅広い。古代の発明では「文字」「貨幣」「酒」など、聞き覚えのあるものも登場するが、17~18世紀の発明では「保険」「株式」「コーヒーハウス(カフェ)」など、今まであまり注目されてこなかったであろう題材にも目を向けているのが面白い。
発明の歴史を知ることで、今の生活が人々の知恵と工夫の上に成り立っているのだなと実感できる一冊!
≪今月の担当≫ 学園前店 店長 中村潔
出版社から様々な注文書がやってきて魅力的なフェアをやってくれませんかと案内される。その紙一枚を送るだけで本がまとめてやってきてそれを入れ替えるだけで売場がつくれる。統一の帯とPOPがあって、お客様の目にも付きやすいのですごく運用は簡単で便利だ。これを自分で何かテーマを決めて本を選びだすと非常に時間がかかってしまう。出版社もバラバラなので手配もなかなか手間がかかるし、POPも必要だ。
でも出版社に囚われない商品の選定は書店にしかできない仕事、ぜひとも大切にしたい。
手に取った本が続編だと分かると、一瞬迷ってしまいます。惹かれた題材は手にしている本。でも続編で別テーマが発刊されたということは、一冊目がかなり好評で面白かったからなのでは……? いや、この本が面白ければまたそっちも買えばいいか! いつも直感を優先しています。
◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆
啓林堂書店ホームページ・外商部ページ( https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/ )にて、更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!
おすすめ児童書
『はるがきた!いいものいくつ?』
【福音館書店】おおたぐろまり/作
春をさがして、数える絵本です。
つくしが1本、てんとう虫が2匹、かえるが3匹、いろいろなものを10まで見つけて数えます。
見つけたもの以外にもいろいろな春が描かれています。すみずみまで見て春を感じたいです。
外商部おすすめの奈良本
『飛鳥|藤原』
【八木書店】石川直樹/著・文・写真3月3日発売予定
奈良県の中央部に広がる飛鳥・藤原地域は、6世紀末~8世紀初めの約100年間、飛鳥京と藤原京という2つの宮都が存在し、国づくりの礎が築かれた地です。写真家・石川直樹は、2年間にわたってこの地をたびたび訪れ、ときには山の奥深くへと分け入りながら、古代の人びとの息遣いに耳を澄まし、現代まで続く営みの深部に迫るべく、撮影を繰り返してきました。宮都にまつわる大きな史跡を辿る一方で、石川の視点は、まちのあちこちに残る不思議な石たち、豊富な水源、地元の祭祀に注がれます。
古墳時代から天皇を中心とした中央集権国家への転換という大きな歴史の流れと、多様な民族と混じり合いながら生きた市井の人びとの物語。両者を行き来する石川が出会った「新しい過去」とは。
写真を手がかりに現地を歩きたくなる、マップと年表(別刷)付きです。
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