啓林堂書店メールマガジン

読書エッセイの名著、待望の文庫化 2024.3.1

3月号 2024.3.1
啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/

読書エッセイの名著、待望の文庫化

 すぐに本を積読してしまう人間だ。数冊のうちはいいのだが、いつの間にか積読タワーになっているということもしばしばある。早く読みたいと思って買った本が、長らく積読されている様子を見ていると、あのときの情熱は一体どこへ行ってしまったのか・・・と何とも情けない気持ちになっていたのだが、本書を読み終える頃には小さなことを気にしていたとすっかり開き直ってしまった。

 

今回ご紹介する本は、「本は眺めたり触ったりが楽しい」(ちくま文庫)。

本好きたちのそれぞれの本との向き合い方をつづったエッセイだ。本を読むのが好きな方であれば、共感できる部分も、そうでない部分も楽しく読むことができるだろう。

 

本を愛する人々の本の読み方は実に多種多様だ。速読を愛する人。音読を欠かさない人。本編とは関係なく、気に入った文章を忘れないようページを折る人、本に直接自分の言葉を書き込むという人もいる。

私は本を折るのも書き込むのもしたくないと思う方だが、書き込むことによって、持ち主オリジナルの本を作っていくという考えがあると知って、成程、そういう考え方もあるのかと気づかされた。人がわざわざページを折った本を見るのは嫌、という人も登場する。考えが人それぞれで面白い。

 

予想外な本の読み方をする人も登場している。買った雑誌の小説部分をわざわざコピーして持ち歩いて読む人が紹介されていたのだが、これは電車などの狭いスペースでも気にせず読書できるから、というのが理由のようだ。

必要な部分だけをコンパクトに取り出す、というスタイルを極めた人も本書には登場しているのだが、私はとても真似できない方法だった。なかなかの衝撃だったので、ぜひ本書を読んでこの驚きを味わって頂きたい。

 

本棚を初めて購入した時の著者の話に共感するところが多かった。

買った当初は本棚にすき間があり、仕方なく参考書なども一緒に棚に並べていたのが、数年たって蔵書が増え、これ以上入らないという状態にまでになった時の達成感。すでに参考書はゼロだ。やっと自分の本棚が完成した、と目標を達成したような嬉しさがあった。自分の選んだ本ばかりが並んでいる状態の本棚は魅力的に見える。

本は勝手に増殖していく、と言うと頷く人が多いと思う。まず本棚の前後二列に本を並べ、そこがいっぱいになると上のすき間スペースに本を横倒しに入れて行き、それでも本が入らなくなると近場の床に積んでいく・・・自分の行動が筒抜けのようでドキドキしてくる。

 

なお、本は読むだけにあらず。手に取り、背表紙、カバーを眺めているだけでも楽しいものだ。買って自分のものにした時の高揚感もたまらない。

本の読み方、そして向き合い方は人それぞれで自由でいいのだろう。読書がより楽しくなる一冊。おすすめ!

<今月の私の一冊>

異体字の世界 旧字・俗字・略字の漢字百科

【河出文庫】

小池和夫/著

 カバーの著者名表記が気になって思わず手に取ってしまった本。本書を読んで行くとその理由と、背表紙と表紙であえて表記を変えていることが判明する。

 私たちの扱う漢字には普段見慣れた字形のものとは別に、微妙に、もしくは大きく形が異なる異体字が登場することがある。人名の例で一番分かりやすいのは「渡辺」さんの「辺」の字だろう。しんにょうの中の形が千差万別なのは、ご存知の方も多いのではないだろうか。

 時代により変遷を遂げてきた常用漢字。印刷媒体の都合による字形の統合と不統合、人名漢字の混乱・・・電子機器への対応事情など、多岐にわたる異体字の世界の事情を探る。

ミニコラム「私と本」

≪今月の担当≫ 奈良店 店長 中村潔

 子どもがもうすぐ2歳になる。

 0歳から絵本の読み聞かせを続けていて、それがきっかけで覚えた言葉が非常に多い。

 「ばいばい」などの言葉や、「ぐるぐる」などの擬音語も繰り返すことで、言葉にすることが出来るようになった。

 すぐに言えるようになる言葉と、そうでないものもある。

 ただ段々と言葉が増えていく過程は非常に楽しい。

 何度も同じ本を読むのは正直つらい部分もあるが、言葉の増えていく過程と思えば頑張れそうだ。

Chat&Chat

 あの本が気になる、この本も気になるとお店の中をうろうろ。エッセイもあれば学術文庫もあり、児童書もあり・・・私の選び方は基本雑食です。

 おすすめの本をチェックして書店に入ったはずが、気づけば予定外の本ばかりを持ってまたレジに並んでいます。

◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆

啓林堂書店ホームページ・外商部ページ( https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/ )にて、
更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!

おすすめ児童書

ぼくはふね

【福音館書店】
五味太郎/作

 ふねがぷかぷか浮かんでいます。どこから来たの? どこへ行くの?

 大きい船に「じゃま!」と言われたり。嵐が来てひっくり返りそうになったり。

 山や畑の中も進めちゃったり。いろんなことがあっても、ぼくはふね。

 なぜか何度も何度も読み返したくなる絵本です。カラフルでかわいらしいキャラクターもたくさん出てきます。

外商部おすすめの奈良本

奈良公園の案内書 ~極(きわみ)~

【KADOKAWA】
千田 稔/監修、奈良県/編
3月8日発売予定

 史跡や国宝が多数現存し、日本有数の観光名所として知られる奈良公園。興福寺、東大寺、春日大社といった古代からのたたずまいを残しつつ、生息するシカや自然との調和も美しい、日本を代表する公園です。

 本書はそんな奈良公園の魅力を、17のテーマでひも解く一冊。歴史や文化を深く知ることで、これまでとはひと味違うディープな散策を楽しめます。

お問い合わせ窓口

問い合わせフォーム https://books-keirindo.co.jp/contact/
本のご予約・ご注文承ります。ご意見・感想・ご要望などお待ちしております。

発 行 (株)啓林堂書店

〒639-1007 大和郡山市南郡山町527-13 TEL/0743-51-1000
文 責 (株)啓林堂書店

〔外商部〕 上田輝美
啓林堂書店 ホームページ

https://books-keirindo.co.jp
※本メールの無断転載を禁じます。

Copyright (C) 2020 Keirindo Shoten. All Rights Reserved.