12月号 2020.12.1啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/
もののけとは何か。そう問われて皆さんが最初に思い浮かべるのは幽霊や妖怪のたぐいだろうか。 現在の私たちが想像するモノノケは映画やアニメの影響が大きい。だが、時代によって語られてきたモノノケは度々異なる存在を示している。
本書『もののけの日本史 死霊、幽霊、妖怪の1000年』(中公新書)は、タイトルの通り死霊や幽霊、そして妖怪と従来区別なく語られてきたモノノケについて、あらためてその言葉の示すものを捉えなおし、考察を深めていこうとするものである。
本来、古代におけるモノノケとは、<正体が定かではない>死霊の気配、もしくは死霊のことを指していた。モノノケは、生前に怨念を抱いた人間に近寄り病気にさせ、時には死をもたらすと考えられていたのである。古代におけるモノノケは畏怖の存在だ。しかし時代が下り、近世にもなると、モノノケと幽霊は混淆して捉えられるようになっていく。
この過程を探るべく、本書では中世の幽霊についても考察がされている。古代ではあくまで正体不明のものを指していたモノノケが、正体の分かっている個人の幽霊も含むように変化している点が興味深い。なお、中世における幽霊の言葉の定義は今より広く異なっているようだ。故人の氏名が入る箇所を<幽霊>と置き換えて表現するなど、面白い文献が紹介されている。当時の状況がうかがえるので本書をぜひご確認頂きたい。
モノノケの文献への登場は古代に多い。 この世の栄華を極めたとされる藤原道長もモノノケの対処に苦労していた一人だ。病がちだったことに加え、多くの人々の恨みを買っていた自覚もあり、道長はモノノケを非常に恐れていた。当時の貴族には珍しく、自らもモノノケを調伏させる方法に精通していたという。だが、そんな道長はモノノケの調伏で大きな過ちを犯してしまう―― なお、かの有名な光源氏もモノノケに悩まされたことがある。源氏物語でピンと来ている方も多いかもしれないが、こちらはその後の対処法に難ありと思わず苦言を呈したくなった。
「モノノケは時代の人間から求められる形をとりつつ、現代まで語り続けられてきた」と本書にあるが、それはモノノケの漢字表記にも見て取れる。「物の怪」は中世に入ってからの表現であることに少し驚いた。
人々がどのようにモノノケと接し、対処してきたのか。詳細を本書でぜひお確かめ頂きたい。
「古代エジプト解剖図鑑 神秘と謎に満ちた古代文明のすべて」
【エクスナレッジ】近藤二郎/著
古代エジプトといえばTVなどでもよく特集が組まれ、人気である印象が強い。だが、知識の偏りから、意外にも歴史の流れを説明するのは難しく感じる。本書はそんな古代エジプトについて正しく解説。ファラオ、王墓、神殿、神々など多岐の分野を網羅している。ピラミッドの姿の変遷を追いかけると、太陽神への畏怖の念が密接に関わっていることが知れる。それでいて築造方法が急遽変更された理由は現実的で興味深い。また、死者の復活を願ったとされるミイラづくりの工程は驚くほど丁寧だ。当時の人々は心臓を重視していたのが分かる。大変手間暇がかかっていて少し驚いた。なじみの薄い人名を読み込むのに少し手こずるかもしれないが、まずは自分の興味のあるページから読み進め、その後、詳細を熟読していくのをおすすめする。ぜひ。
≪今月の担当≫ 学園前店 店長 澤田健吉
ネットやスマホの台頭で子供の本離れを感じるが、今年は鬼滅の刃が社会現象となり、当店にも多くのお客様にご来店頂いた。楽しそうに鬼滅の刃を購入していく子供達を見て自身の子供時代を重ね合わせた。私が子供の頃はドラゴンボールが全盛で全巻揃える為、書店(というより街の本屋)に足繁く通った。今時の子供たちも本屋に行くことにわくわくするのだろうかと考えていたが、今年の状況を見てそれは杞憂だったと思えた。
あっという間に11月も過ぎ去り12月に! もう年末なのだな、と実感しています。そういう時こそ少し心に余裕を、そう思ってカバンに何冊か本を忍ばせてはみるけれど、実践するのがなかなか難しい今日この頃です。
◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆
啓林堂書店ホームページ・外商部ページ( https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/ )にて、更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!
おすすめ児童書
『みそしるをつくる』【ブロンズ新社】高山なおみ/文 長野陽一/写真
子どもがひとりでみそしるを作れるように、作り方を紹介した写真絵本です。おだしをとって、味見をしてみる。おいしいぞ。具を入れて、みそを入れたら、もっとおいしい。写真絵本なので使う材料や分量も一目でわかります。手順通りに作れば、はいできあがり。心も体もあたたまるみそしる、食べたいなあ。まつぼっくりを見つけたら、ぜひやってみてね。
外商部おすすめの奈良本
『万葉樵話』
【筑摩書房】多田一臣/著12月1日発売予定
今まであまり語られることのなかった『万葉集』の隠れた魅力について縦横無尽に筆を振るった『万葉集』こぼれ話。知っているようで知らないおもしろい話が満載。
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