2月号 2023.2.1啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/
地図記号、と言われてあなたが最初に思い浮かべる記号は何だろう。有名どころだと郵便局、病院、学校、市役所などだろうか。
学校で習ったことを懐かしく思い出される方も多いかもしれない。だが、私たちが学校で習った地図記号はほんの一部にすぎないと、この本を読むと分かる。
今回ご紹介する本は「地図記号のひみつ」(中公新書ラクレ)。懐かしい地図記号、見覚えのないマニアックな地図記号、実に様々な種類の地図記号が本書には登場している。
水面からゆらゆらと立ち上がる湯気を表現した「温泉」は、日本で初めて登場した地図記号なのだそう。温泉を的確に表しているように思えるが、温かい料理を連想する外国人の方もおられるようで、世界共通認識の記号ではないところに注意が必要だ。
実は現在の記号に至るまでにいくつかの変遷を経ており、過去には温泉の湯気をまっすぐな直線や、今のS字とは逆向きの形で表現している時期もあった。ずっと同じ地図記号だったわけではない、というところは少し意外に思える。
なお現在、地形図等を発行している機関は国土地理院だが、昔は陸軍参謀本部陸地測量部が発行していた時期があった。
当時の地図記号は、歩兵の行軍を意識した記号の使い分けがされており、全体的に種類も細分化されている。
例えば「田」。現在もタテ棒2本で表される地図記号だが、さらに田の深さ(歩行難易度)別に「乾田」「水田」「沼田」の3つに分類されていた。
今の「田」の地図記号であるタテ棒2本の底辺に横棒2本を加えて表されていた「沼田」とは、ぬかるみの深い田のことを指し、横断ができないという意味にもなる。
インターネットで簡単に地図も航空写真も検索できる現代とは異なり、当時は現地を詳細に想像できる地図が求められていたのだろう背景が読み取れる。他に「橋」などの例も登場しているので、ぜひ、本書をじっくり確認してみて欲しい。
戦後、細分化していた地図記号は統廃合が進められた。
例えば「桑畑」。ワイ字の尾に右折れのカギがついた地図記号は、養蚕業の衰退により姿を消している。
反対に新しく採用された地図記号もある。小中学生からの公募により採用された「老人ホーム」「風車」は記憶に新しい方も多いだろう。
将来的に風力発電が増加することを見越して採用された「風車」は、少し斜めを向いた羽の向きが印象的な記号だ。「風車」の記号は風車の特徴である羽の表現に相当苦心したようだ。そんな背景を知っていると、地図を眺める目も少し変わってくる。
明治から令和に至る日本社会の変貌が読み取れる地図記号。本書を読めば、きっと自分の目で地図を確かめてみたくなることだろう。巻末に紹介されていた参考文献も気になって仕方がない。おすすめ!
「深読みしたい人のための 超訳 歴史書図鑑」
【かんき出版】
伊藤賀一/監修
日本史を作った66の歴史書をイラストと共にわかりやすく解説。 「古事記」や「平家物語」、「太平記」といった有名なものから、少しマイナーなものまで幅広く網羅されており、意外な裏の事情にも触れる。史実を忠実に書きあらわそうとしたもの、意図があって脚色されたもの、それぞれの書物が誕生した背景や立場を踏まえて眺めてみると、見えてくる風景が違ってくる。 新たな発見があること間違いなし。歴史を深読みしたい人や、大人の学びなおしにもピッタリ!
≪今月の担当≫ ジュンク堂書店奈良店 店長 澤田健吉
地政学の本の人気が高まっている。ウクライナでの戦争がきっかけとしては大きいが、近年は権威主義的な国家が台頭していることも要因だろう。 書店は政治や思想に関する本も多くあり、様々な意見をそれらから読み取ることができる。価値観や考え方の違いから多くの問題は起こるが、書店が違う意見も知る場所として機能し、相互理解を深める事で平和に対して微力ながら貢献出来るのではないかと日々考えている。
あけましておめでとうございます。心機一転、新しいブックカバーでも買ってみようかと手に取ったのも束の間、いや、それならもう一冊本が買えるな・・・? と気づき、すぐに棚に戻してしまった自分です。
◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆
啓林堂書店ホームページ・外商部ページ( https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/ )にて、更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!
おすすめ児童書
『だるまちゃんとうさぎちゃん』
【福音館書店】加古里子(かこさとし)/作・絵
雪が積もった日、だるまちゃんは雪だるまを作りました。 そして、うさぎちゃんと出会って「うさぎ」を作って遊びます。 手袋で作ったうさぎ、新聞紙で作ったうさぎの帽子、作り方も書いてあるので、みんなで作ったら楽しいですね。
外商部おすすめの奈良本
『まつりと神々の古代文化財をしらべる・まもる・いかす』
【吉川弘文館】笹生衛/著2月1日発売予定
古来、人間はなぜ目に見えない神や霊魂を感じ、その存在を信じて「まつり」を行うのか。文献史学や考古学はもとより、脳の認知機能に基づく認知宗教学や気候変動の復元などから、古墳祭祀や践祚大嘗祭、御霊会、地域神社の祭礼などを再検討。神輿や山車、近年注目の塩津港遺跡にも言及し、神観・祭祀の古代からの変遷や「まつり」の現代的意味を解明。
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