12月号 2024.12.2
啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/
本格的な冬が近づいてきた。これから寒さがますます厳しくなる季節だが、そんな冬の寒さや乾燥から身を守り、万全の状態で春を迎えようと着々と準備を進める、かわいくておもしろい冬の植物たちに目を向けた本を今回はご紹介したい。
今回ご紹介するのは、「冬芽ファイル帳 かわいくておもしろい冬の植物たち」(小学館)。
「植物観察で、どの季節が好きですか?」と、問われれば迷わず「冬」と答えるという著者。冬は花が咲いていないのに・・・と真っ先に思ってしまったのだが、観察対象は花ではなく冬芽(ふゆめ)だ。冬芽観察は枝先を見るだけでよく観察が簡単こと、そして樹木の冬の過ごし方を知ることができるのがメリットなのだそう。
本書では比較的容易に日本国内で見ることができるユニークな冬芽50種類と、かわいい芽吹きの様子を10種類の写真で紹介。親しみやすい見出しと大きな写真で、冬芽を楽しむことができる構成になっている。
例えば「クリにそっクリ」と見出しのつけられたクリの冬芽は、見た目もクリの実にそっくり。ただ食べることはできないので、その点はご注意を。味覚ではなく視覚で楽しんでいただきたい。
「花怪獣、襲来」で紹介されているのはマルバノキ。赤い星形の花を晩秋に咲かせるるため、落葉後の枝先にもよく開花しているそうだ。が、紹介されている冬芽とのツーショットが・・・! 人によって感じ方は違うようだが、私は少し怖いと感じた。ショッキングピンクにも似た色と、あとは花の造形の問題だろうか。他の方の意見をぜひ聞いてみたいところだ。
なお、各紹介ページに実物大の冬芽スケッチが添えられているのが嬉しい。想像より随分小さいなと度々驚かされることになる。中でもヤマブキは1~2mmとかなり極小。冬芽観察ではルーペが欠かせないというのも納得である。
他にも「今日もきまった!アフロヘア」「気分はボクサー」「ライバルはル・コルビュジエ」「冬芽界のカオナシ」・・・など、かわいらしくも個性的な冬芽がたくさん紹介されているので、ぜひ、本書で写真とスケッチを見比べながら確認してみて欲しい。
本書の後半では「冬芽の作戦ファイル」として、植物の生存戦略が紹介される。
冬芽は冬の間姿が変わらないが、春になると活動を始める。小さな冬芽の中から葉っぱや花、花の中にある実のもとが次々と外に出てくる様子はさながらマジックのようだ。
実は同じ植物の冬芽でも、極端に大きさが違う冬芽がついていることがある。葉だけが出てくる葉芽、花だけが出てくる花芽と、役割を分業している場合があるのだ。また、リスクヘッジに余念のない冬芽も登場する。様々な冬芽が登場すればその生存戦略も多岐にわたっていて興味深い。詳細は、ぜひ本書を確認してみて欲しい。
持ち運びしやすい新書サイズでオールカラー。解説もくわしく、今から冬芽観察をはじめたい人には入門書としてうってつけだ。そうでない方でも、個性豊かな冬芽の写真集として眺めているだけで楽しめること間違いなしの一冊。おすすめ!
「僕は猛禽類のお医者さん」
【KADOKAWA】
齊藤慶輔/著
舞台は北海道にある釧路湿原野生生物保護センター。野生の猛禽類を保護・治療する日本で唯一の機関だ。本書は野生猛禽類専門の獣医師が、人間の活動によって傷ついた野生動物たちと日々向き合う様子を紹介する。
電線や鉄塔に触れる感電事故、風車のプロペラに巻き込まれる衝突事故、狩猟で使われる鉛弾による鉛中毒・・・日々動物たちの犠牲が絶えない。「保全医学の最前線から」と見出しのついたカラーページでは、交通事故で上のくちばしを骨ごと失ったオジロワシがヘッドギア式の義嘴(ぎし)をつけて餌を食べる様子が紹介されており、衝撃を受ける。
傷ついた野生動物を救うだけではなく、動物たちの暮らしている環境をどう改善すればいいのか、それにより人間の病気の予防も促せないか・・・著者の視点は救った後、その次にまで向けられている。
野生動物と人間の本当の共生とは何か、深く考えさせられる一冊。
≪今月の担当≫ 店舗営業本部 部長 西田大栄
来春、甥っ子が小学校に入学する。
それまでに自分の名前をひらがなで書き、一桁の計算ができないと授業についていけないらしい。
「それなら任せなさい!」と本屋らしく老舗出版社のドリルを買い込んで、いざ練習!と臨んだがまったく興味なし。
どうしたものかとスタッフに相談すると“う〇こドリル”を勧めてくれた。
う〇こって・・・と思いつつ持参すると、これがピタリとはまってどんどん進むではないか!
書店員の選書も「う〇こ」には敵わないなぁ。
店頭で面白そうな本を探していると、連れて帰るかどうか悩む子が必ず一冊は出てきてしまいます。優先順位をつけるのがつらい!
◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆
啓林堂書店ホームページ・外商部ページ( https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/ )にて、更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!
おすすめ児童書
『クリスマスのおかいもの』
【講談社】
たしろちさと/作
今日はクリスマスイブ。
もみのきマンションに住む動物たちはクリスマスパーティーのために商店街へ買い物に出かけます。
商店街はお客さんがいっぱいでクリスマスのうきうき、わくわくする気分が伝わってきます。
動物たちは、ケーキの材料やプレゼント交換のための贈り物、ツリーの飾りも買いました。
さあ、パーティーです。プレゼント交換もして、おやすみなさい。今夜はサンタさんが来る日です。
外商部おすすめの奈良本
『奈良時代の大造営と遷都』
【吉川弘文館】
小笠原好彦/著
12月16日発売予定
710年、藤原京より平城京に都を遷し、新たに律令社会の形成をめざした奈良時代。地方の行政を担った国司・郡司らの仕事や古代の道に立てられた告知札、対馬・隠岐の実像や墓誌にいたるまで、古代社会の諸相を描く。遷都を繰り返した「聖武による五年間の彷徨」の意図や、行基が参画した大仏造立、平城京内の寺々の造営の実態を解き明かす。
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