啓林堂書店メールマガジン

モノづくりのヒントは生物にあり! 2025.1.6

1月号 2025.1.1

啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/

冬芽ファイル帳

あけましておめでとうございます。

今回ご紹介するのは、「バイオミメティクスは、未来を変える 生物をきっかけに創られたテクノロジー」(WAVE出版)。

まず、バイオミメティクス(Biomimetics)って何? という話なのだが、バイオミメティクスとは、Biology(生物学)、Mimesis(模倣)、Technics(技術)が組み合わさってできた言葉で、多種多様な生物からモノづくりのヒントを得る技術のことを言うのだそうだ。

 

バイオミメティクスは建築、宇宙、農業など、あらゆる分野で日々活用例を生み出し続けている。

有名な活用例としては、水をはじくハスの葉を参考にして作られたヨーグルトがつきにくいフタ、サメのウロコの構造を採用することで水の抵抗を下げた速く泳げる水着、ゴボウの実のフック形状を利用した面ファスナー(マジックテープ)などがあげられる。他の例も少し見てみたい。

 

砂漠に生息するサハラギンアリ。砂漠の灼熱地獄を耐えられる秘密は体毛にあるのだそうだ。

元々生物の毛には、寒さや紫外線、衝撃などから体を守る目的があるのだが、サハラギンアリの体毛は特に耐熱に特化している。太さ約3μmの体毛の断面は特徴的な三角形をしており、三角形のプリズム構造によって日光の入射光約90%を反射、体温の上昇を防いでいる。当然毛は一本ではないので毛の厚い層がアリの表皮を守る。涼しく保つ布製品への実用化などが検討されており、近年の酷暑対策が期待されている。

 

食虫植物として有名なウツボカズラの特徴は、何といってもツボ型状の「捕虫器」だろう。

獲物を逃がさないようこの「捕虫器」は、くるっと巻いたフチの表面や内部の壁面がツルツル滑るようになっている。足をとられたが最後、「捕虫器」の中は消化液になっているため、誘い込まれて落ちた小さな虫はウツボカズラに食べられてしまう。

これはタイヤと路面の間に水の膜ができ、スリップしてしまう「ハイドロプレーニング現象」と同じ原理。本書ではこの特徴を応用した、長時間汚れをつけさせないコーティング剤が紹介されている。太陽光パネルにコーティングを施すことで、鳥のフンの付着を抑えたり、雪を滑り落ちやすくするといった効果があるのだそうだ。

 

反対に、氷の上を移動することが多いホッキョクグマが滑らないのは、主にホッキョクグマの足裏にある凹凸で滑る原因となるこの水の膜を吸収し、氷上でも足と地面の摩擦をしっかり効かせているからだそう。雪道を走るのに欠かせないスタッドレスタイヤはこれを応用した技術なのだが・・・。詳細については、本書をぜひご確認頂きたい。

 

最近の冷蔵庫が奥まで明るくよく見えるようになった理由など、実はあれも? と思うような事例が他にもたくさん取り上げられている。

気軽にバイオミメティクスのおもしろい世界に触れられる入門書。生物の生きる知恵にたくさん学ぶことがあるのだなと気づかされる1冊だ。

<今月の私の一冊>

わかったつもり 読解力がつかない本当の原因

【光文社新書】

西林克彦/著

 本書によると、「わかったつもり」というのは「わからない部分が見つからない」状態のことをさすのだそうだ。
 人は、自分で「わからない」ことを自覚しているときは「わからない」原因を自分で調べ、「わからない」ことを探索しようとする。だが、一度「わかったつもり」の状態に陥ってしまうと厄介で、「わからない部分が見つからない」状態のまま、その先を探索しなくなってしまうのだ。
 「わかる」から「よりわかる」ようになるため、我々は「わかったつもり」という障害をどのように乗り越えればいいのだろうか。
 本書では「わかったつもり」に陥りやすい原因、そして「読み」を深めるために押さえておきたいポイントを、わかりやすくまとめ紹介している。読解力を深めたい方必見!

ミニコラム「私と本」

≪今月の担当≫ ジュンク堂書店奈良店 店長 澤田健吉

 書店の匂いが好きだ。書店の店内は印刷物の匂いが混ざり合って特有の香りがあるように思う。これは子供の時、新学期に新しい教科書をまとめて渡された時にも似た感覚を得た。
 匂いは感覚的に記憶と結びついている。過去と同じ匂いを感じる時は一瞬にして自身をその時代、その瞬間に引き戻してしまう。私にとって書店の匂いは子供時代に訪れた楽しかった記憶とリンクしているのだろう。
 現在、書店は減り続けているが店でしか味わえない、かけがえのないものがこの先も続くことを願う。

 

Chat&Chat

 もう1冊、楽しそうな本を今月は見つけたのですが、今回は紙面の都合上断念。次の機会に紹介したいと思っています。お楽しみに!

◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆

啓林堂書店ホームページ・外商部ページ( https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/ )にて、
更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!

おすすめ児童書

おせち

【福音館書店】

内田有美/文・絵 満留邦子/料理 三浦康子/監修

 年が明けて新しい一年が始まるとき、おせちを食べます。

 おせち料理って何が入っているのでしょう。何か意味があるのでしょうか。

 例えば、黒豆はまめまめしく暮らせますように。たけのこはすくすく育って大きくなあれ。

 重箱に詰まっている料理には様々な願いが込められています。

外商部おすすめの奈良本

奈良の食文化

【臨川書店】
冨岡典子/著
1月15日発売予定

 奈良に住む人々が何を食べてきたのか、そして何を食べているのか、その生活・文化と食との関わりとは―古代から現在に至るまでの食生活を通史の型式で丁寧にたどり、また、東大寺における仏教儀礼の食や奈良各地の祭りに関わる神饌など宗教行事に根差した食にも焦点をあて、奈良にまつわる食文化について概観する。

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