7月号 2024.7.1
啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/
健康診断の時、本人で間違いないか、名前をフルネームで必ず確認される。これは過去の事故を教訓にした大切な確認作業であることを本書を読んで理解した。
今回ご紹介する本は、「間違い学 「ゼロリスク」と「レジリエンス」」(新潮新書)。想定外のヒューマンエラーがなぜ発生したかを分析し、エラーに気づくためのしくみづくりを学術的に検証する内容だ。
冒頭の本人確認の件は、過去、医療機関で実際あった手術患者の取り違えから徹底されるようになったのだという。
心臓の手術をする予定だったAさんと肺の手術をする予定だったBさん。二人は手術の予定日が同じだった。
手術当日に担当医が不在だったこと。手術室へ迎えに来た看護師と面識がなかったこと。AさんもBさんも本人と違う名前で何度も呼ばれていたが、違う名前を呼ばれているとは思わず返事をしてしまっていたことなどが重なり、二人は取り違えられて手術されてしまった。
状況を分析すると、いくつものヒューマンエラーが重なったことで起きた事故だと分かる。気づけたであろうポイントは何度かあったが、いずれもエラーだと認識できずそのままにされてしまった。
患者が本人で間違いないかの確認がこの事故以降、徹底されるようになった。本書ではその他の改善点についても言及しているので、ぜひ確認してみて欲しい。
他には、欠席者を合格にしてしまった入試の事例も紹介されている。
試験当日、受験番号を見間違えたことによる席の座り間違いが発生した。受験番号の上から2桁目だけ数字が違ったのだ。本来であれば、正しい受験番号の受験者が自分の席に座れないことになるため、間違いはすぐに発覚するのだが、その日はたまたま正しい受験番号の受験者が欠席だった。そのため、間違って座ってしまった受験者は自身の誤りに気づけなかったようだ。
その後、試験官による本人確認が行われるも、ここでも間違いは発覚しなかった。桁数の多い受験番号で、試験官が下2桁の数字しか確認しなかったためだ。そのまま試験は終了。その後、本部での答案用紙確認中に受験番号が連番になっていないことが発覚した。だが答案用紙への受験番号の記入間違いはよくあり、今回もそのケースだと判断されてしまう。なお、この試験の答案用紙には受験者の公平性を担保するため、氏名を記入する欄はなかったという。
その後、当日欠席していた受験者より、試験を受けていないのに合格通知が届いたと学校に連絡が入った。そこで席の座り間違いが発生していたことに初めて気づいたという流れだ。
この場合、同じ間違いを繰り返さないためにはどのような対策が考えられるだろう。コスト面などは一旦おいておいて、様々な方法を考えてみて欲しい。
どんなに機械化やDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでも、人が関わる以上、ヒューマンエラーによる事故を完全になくすことはできない。大切なのはエラーは発生するものとして想定しておき、エラーが生じても大きな被害にしない、ならないようにすることだ。
エラーを起こしたことに最初本人は気づいていない。まずはエラーが起きたことに外から気づかせることが大切になってくる。
決して人間は機械より劣っているわけではない。状況によって柔軟に、臨機応変な対応ができることが人間の強みだ。今後は想定外のことが起きたとき、どう対応できるかがより問われる時代が想定される。リスク管理の見直しに。おすすめ!
私たちが行動するきっかけを作っているのは「論理」や「情熱」ではなく「認知バイアス」だった――
改めて意識してみると、無意識、意図的に関わらず私たちの日常は「認知バイアス」で溢れていることに気づく。入口が野菜売り場から始まるスーパーは、レジへ向かうまでの動線に仕掛けがある。誰も選ばない選択肢をあえて含め、選んで欲しい選択へ誘導する三択など、日常にひそむ「認知バイアス」を知るほど、これは自分の意思に基づく行動だろうか? 巧みな仕掛けで誘導されているかも? とだんだん普段の自分の行動に自信がなくなってくる。最後のあとがきまで読んだところで思わず唸ってしまった。世界でベストセラーも納得の良書。
≪今月の担当≫ 外商部 社員 上田輝美
最悪だ。ただでさえ大雨なんて悪天候の中、やっとの思いでたどり着いた駅で異常事態に気がついた。
鞄の中に入れていた本が濡れた。買ってまだ一週間も立っていないのに!
帰宅時ならまだ良かったが、通勤途中で対処法ができる限り水気を拭き取って本を圧縮しておくくらいしかない。雑紙をかませたクリアファイルに泣く泣く本を突っ込むが、鞄の底が浸水しているため気が気でなく、その日は一日中ずっと濡れた本のことを気にしていた。
もう雨のひどい日に本は持ち歩かないと、固く心に誓った。
突然の豪雨は本の天敵。濡らした本はやはり波打ってしまい元通りにはなりませんでした。大雨だけはもう勘弁してほしい今日この頃です。
◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆
啓林堂書店ホームページ・外商部ページ( https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/ )にて、
更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!
なぞなぞ博士とトモキくんがなぞなぞを考えながら交通安全を理解する絵本です。
トモキくんは公園からボールを追いかけてきました。やってはいけないのはなんだろう。
「机についているのはひきだし、靴下をはかないのははだし、では危ないのは?」
わかるかな。楽しくみんなで答えよう。なぞなぞは8問あります。
「Japan Brand Collection 2024 奈良版」には奈良県に住んでいる方や訪れる方にとって本当に価値ある情報が溢れています。本物を知り体感することで、より潤いのある時間を過ごせるでしょう。今まで知らなかった素晴らしいモノやサービス、一流の料理と上質な空間は、私たちに感動や満足感を与えてくれ、私たちの人生をより豊かにします。奈良県の名門料理店や高級旅館を始め贈答品・ファッション・ヘアサロンなど様々なジャンルの一流店の情報が美しい写真と文章で編集されています。
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