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ニッポン第1号ものがたり 2021.6.1

6月号 2021.6.1
啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/

ニッポン第1号ものがたり

 今回ご紹介するのは、様々なジャンルの日本の第1号にせまる『ニッポン第1号ものがたり』(講談社)。著者はタイムスリップ探偵団シリーズなどで知られる楠木誠一郎だ。

 小学生を対象にした児童書だが、単に日本第1号を知るだけのマメ知識本ではない。インターネットで調べればすぐにわかるような答えを示すのではなく、ジャンルの歴史を楽しむことを目的としていることが、本書の「はじめに」でも述べられている。思わず好奇心をくすぐられるような構成にぜひご注目頂きたい。

 

 段々と暑くなってくるこの時期、どうしても冷たい食べ物が欲しくなる。もう少し夏が近づくと、かき氷が食べたくなるが、「日本ではじめてかき氷を“楽しんだ”有名人」が本書で紹介されている。なお、楽しんだとしているのは、かき氷を最初に食べた人の文献が残っていないからだそうだ。はっきりと第1号を認定することの難しさを実感する。

 

 随筆集・枕草子で知られる清少納言。「枕草子」の「第三九段 あてなるもの」で、かき氷に舌つづみをうつ様子が描かれている。

 ただ、当時はかき氷を食べるのにも一苦労。当時は氷も砂糖も希少だったためだ。

 まず、氷は冬のあいだに自然にできた氷を、山中など涼しい場所に穴を掘り、その上に小屋などを建てた氷室で保存していたという。氷室守という番人がいたほどなので、盗まれてしまう恐れもあったのだろう。取り寄せるにしても屋敷に氷が到着するまでにも氷は刻々と溶けていってしまう。長時間保存はきかないため、届いた氷もすぐに削って食べなければならなかったようだ。

 なお、氷にかけるかき氷シロップはもちろん、砂糖すらもまだ貴重だった当時、代わりに「あまづら」が使用された。アマチャヅルという植物を煎じると出てくる甘い汁だという。

清少納言についての記述も本書は詳しい。ライバルとしてよく名前のあがる紫式部との本来の関係についての著者の見解も面白い。平安時代について、もっと詳しく調べてみたいという気持ちになる。

 

 子どもの頃、テレビでアニメを見ていると、親から「またマンガなんか見て」と言われ、マンガじゃなくてアニメなんだけどな、と内心思いながらも、火に油を注ぐと面倒だからと、特に指摘はしなかった・・・そんな覚えのある方は案外多いのではないだろうか。

 そもそも「マンガ」とはどこまでを指すのだろう? マンガ雑誌や、コミックスで読むものだけがマンガなのだろうか?

 マンガ「第1号」を探ると共に、マンガとなぜかひとくくりにされるルーツをさかのぼる。著者によると、広辞苑(第七版)には「マンガ」という項目には3つも意味が載っているという。第1号は「鳥獣戯画」? ここでも深掘りが面白い。

 

 日本初の人物を楽しく探る歴史エッセイ! おすすめ!!

<今月の私の一冊>

世界史は化学でできている 絶対に面白い化学入門 
【ダイヤモンド社】 左巻健男/著

人類がおそらく初めて知った化学的現象は、火の「燃焼」という化学反応だろう。火への恐怖を克服し、利用することを覚えた我々人類の祖先は、「火の技術」によって生活を豊かにしていった。暖房や照明への利用、調理、更に発展させて鉱石から金属を得る精錬、金属加工・・・特に鉄鋼を加工し武器や工具、農具を作る鉄づくりの技術の影響力はすさまじかった。化学は、火、金属、アルコール、染料、薬、麻薬、石油、そして核物質と、ありとあらゆるものを私たちに与えた。本書は化学が人の歴史にどのように影響を与えてきたのか、化学の視点で読み解く。

ところで、あなたは化学物質DHMO(ジハイドロゲンモノオキサイド)の話をご存知だろうか。DHMOは我々の身の回りに気体、液体、固体の状態で多量に存在する、無色で無味・無臭の化学物質であり、毎年数え切れないほどの人を殺しているという――その正体とは? ぜひ本書でご確認を!

ミニコラム「私と本」

≪今月の担当≫ 学園前店 社員 中西哲夫

 

 日々の作業中に面白そうな本に出逢うこともあって、つい「買って帰ろうかな?」と思うことがある。でも僕はそんな時、あえて買わないようにしている。

 普通に考えれば、勤務先で購入したほうが売り上げにも貢献できるし(大した額ではありませんが…)、ほかの店舗で購入したなら、ライバル店の売り上げをあげる事にもなってしまう(くりかえし、大した額では…)。

 でも僕は、休みの日にふらっと立ち寄った書店で、思いがけず見つけた本を購入したいのだ。

 あてもなくフラフラと店内を回り、思いがけず出会った本(それは、あらかじめ買おうと思っていたものでも構わない)を手に取り、レジに向かうという行為も含めて楽しいのだ。

 僕にとってはこれが、本を読む行為とおなじ、もしくはそれ以上に重要なことだったりする。

Chat&Chat

 気づけば今月は歴史中心のラインナップになっていました。楽しい誤算! 書評も参考にすることはありますが、店頭で出会った本を紹介することが多いので計画は狂いがちです。

◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆

啓林堂書店ホームページ・外商部ページ( https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/ )にて、
更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!

おすすめ児童書

ぼくのがっこう

【PHP研究所】

鈴木のりたけ/作・絵

 

みんなはどんながっこうに通っていますか。

入口が滝――!? 下駄箱が鳥の巣――!? 机がぶらんこになっていたり、先生とこどもが入れ替わっちゃったり。

こんな学校あったらいいな、って思っちゃうことがたくさん出てきます。

絵本の中にはいろいろなキャラクターを見つける楽しみもあります。

外商部おすすめの奈良本

愛蔵版 心に響く101の言葉』 

【ウェッジ】 多川俊映/著

6月18日発売予定

「沈黙によって魂を洗う」「自然は自己のひろがり」「あるがまま雑草として芽を吹く」――。藤原氏ゆかりの奈良の古刹・興福寺の前貫首が、仏の教えと深い学識をもとに、古今の名言を選び、自らの書とエッセイでつづりました。心に響く、迷いが晴れる、言葉による人生の処方箋です。名著『心に響く99の言葉 東洋の風韻』の増補改訂版として、あらたな言葉を追加収録。美しい装丁とともに、愛蔵の1冊となることでしょう。

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