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デジタル・ミニマリストという考え方 2021.5.1

5月号 2021.5.1
啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/

デジタル・ミニマリストという考え方

 常に様々な情報にさらされている現代社会。そんな現状に警鐘を鳴らす1冊が、今回ご紹介する『デジタル・ミニマリスト スマホに依存しない生き方』(ハヤカワ文庫NF)だ。

 

 スマホが登場した当初、あのスティーブ・ジョブズすらもスマホがここまで人々の生活に欠かせないものになるとは想定していなかった。プレゼンはiPodと携帯を両方もつ必要がなくなることを強調したものだったと著者は述べている。
 急速にその影響力を広げ、人々の生活に欠かせないものとして組み込まれていったスマホ。気になった時にすぐ調べ物ができ、友人の近況をすぐに把握、自分の状況も写真付きで知らせることができる。
 しかしその一方で、空き時間さえあればスマホを触る日常になっていないだろうか。我々の生活は本当に便利になったのだろうか?

 

 SNSを始めた当初は普段の生活を便利にするツールの一つとして想定していたのに、気づけば通知が来ていないかと気になって常にスマホをチェックし手放せなくなっている。また、調べ物をしていたはずなのに、気づけばネットサーフィンで30分時間が経過していた・・・あなたもそんな覚えはないだろうか? しなくてはならないこと、したいことが他にあったはずなのに。

 

 スマホへの依存はたばこへの依存と同じ、というショッキングな例えが本書に登場する。たばこが健康を害するのは皆が認めるところだが、スマホが害するとはどういうことだろう?
 SNSを利用したことのある方は覚えがあるだろう。ネット上にアップした記事や写真に反応があると通知アイコンが赤く点灯する仕様になっている。システムの開発当初、この色は赤ではなかったそうだ。が、のちに人々の関心を引いて思わずクリックしたくなってしまう警戒色に仕様がわざわざ変更されている。
 人々は昔から集団で生活を営んできた。そのため、本能的に群れの中で認められることに快感を覚えるようになっている。デバイスはこの承認欲求を巧みに刺激し、人々の行動をコントロールしているのだ。

 

 これはネット記事においても同じだ。興味関心をひく記事を思わずクリックしてしまう――人々がそんな心理に向かうよう、莫大な開発費が投じられているのは意外に知られていない。
 我々は知らず知らずのうちに主体性と、自分の時間を奪われているのだ。

 

 「本当に大切なこと」に集中するにはどうすべきなのか。本書の提示するデジタル・ミニマリストという生き方は常に自分にとって必要なサービスを厳選し、費用対効果を意識するものだ。具体的な内容はぜひ本書をチェックしてみて欲しい。

 

 本書はSNSやデジタル・デバイスとのつき合い方を今一度見直すきっかけになるだろう。おすすめ!

<今月の私の一冊>

異形のものたち 絵画のなかの「怪」を読む

【NHK出版新書】 中野京子/著

人魚、蛇、悪魔と天使、魔女、人面豚――。
本書に登場する異形のものたちは、妖艶な美しさから思わず魅入ってしまうもの、とっさに目を背けてしまいたくなるようなグロテスクな姿をしたものなど実に様々だ。
怖いのは絵を見た時から何か違和感があると気づいているのに、その原因がはっきりしない時だ。鑑賞者がはっ、と気づいたときに恐ろしい全体像が浮かび上がるため、本当にぞっとする。普通の人間ではありえないところから手が出ているもの、暗闇から鋭い視線を鑑賞者に投げかけているもの、足元に骸や骸骨が・・・
夜一人でいるところで読むのはおすすめしないが、不気味だから、という理由だけで遠ざけてしまうのは勿体ない。画家によって巧みに計算された効果に気づいたときなど、思わずうなってしまうはず。政治的な理由により、時代によって姿を変えていった異形のものなどにもぜひ注目してみて欲しい。

ミニコラム「私と本」

≪今月の担当≫ 新大宮店 店長 小川岳志

 現在様々なジャンルの本が出版されており、何かに興味を持ったり、何かを始めてみたいと思った時、探せばたいていの本は見つかる。それがどんなジャンルであっても、本を読むということは、新しい世界を知り、自分の世界が広がるということだ。  
 お客様がレジでお会計をして、本を手渡す。毎日何回もしていることだが、それはその人が新しい世界と出会う瞬間だとも言える。そんな瞬間に毎日立ち会っているのかと思うと、この仕事が何か特別な仕事のようにも思えてくる。

Chat&Chat

 しばらく桜の花びらの形をしたしおりを気に入って使っていたのですが、そろそろ季節の変わり目。気分を変えるため、また違うしおりにしようかな? と悩んでいるところです。

◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆

啓林堂書店ホームページ・外商部ページ( https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/ )にて、
更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!

おすすめ児童書

ゆかいなかえる

【福音館書店

ジュリエット・ケペシュ/文・絵

 4個の卵がおたまじゃくしになり、2本の後足が生え、前足も2本生えて、かえるになりました。
 4匹はいつも一緒です。かたつむりのかくしっこをしたり、さぎから身をかくして助かったり。
 ゆかいなかえるたちが仲良く過ごす一年間をリズミカルな文章で描きます。

外商部おすすめの奈良本

新 日本古代史

【育鵬社/発行、扶桑社/発売】
田中英道/文・その他


 歴史を書き換える試み。古事記・日本書紀に書かれていた〝史実〟を読み解く。古事記や日本書紀の記述を“神話だから”として歴史から切り離し、土器や古墳などを〝文字に書かれたものではないから〟として軽視してきた従来の日本古代史は、歴史の実像を描くことができずにいた。本書は、そうした戦後の唯物史観からは絶対に見えてこない、歴史の実像に迫る試みである。

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