6月号 2024.6.3啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/
今回ご紹介する本は、「アリの巣をめぐる冒険 昆虫分類学の果てなき世界」(幻冬舎新書)。
著者はアリやシロアリと共生する昆虫の生態研究や分類を専門とする昆虫学者、丸山宗利だ。
本書は2012年刊行の「アリの巣をめぐる冒険 未踏の調査地は足下に」を元に、その後の研究成果などを新たに反映させた新装版である。
アリの行列や巣に、時折アリではない虫が混じっていることがあるそうだ。
アリたちに紛れて行列を一緒に移動し、行動しているものがいるかと思えば、アリがせっせと巣に運んでいる餌に捕まり、ちゃっかり餌を食べてしまうものもいる。中にはアリの巣の中で勝手に居候しているものまでいると知って、最初かなり驚いた。
だが、好き勝手する彼らをなぜかアリは追い出さない。
アリを利用し、共生する虫たちのことは広く「好蟻性生物」と呼ばれる。そんな「好蟻性生物」に魅せられた著者が、彼らをめぐって奮闘してきた研究の日々と、「好蟻性生物」の生態に深く迫る一冊となっている。
幼少期から生き物や昆虫が好きだった著者。
主にヒメサスライアリと、そのアリに共生しているハネカクシについての話が多く紹介されているのだが、研究の苦労話が絶えない。
例えば分類学の研究を進める一環で、日本にはない標本を海外から取り寄せる一場面が出てくるのだが、貴重なサンプルの貸し出しはなかなか了承してもらえない。先方としても不用意な貸し出しをして、貴重なサンプルを失うわけにはいかない事情があるわけだが、英語で依頼文を作成し、先方に送るも返事が来ない、やっと来たと思えば貸せないという返答だったということが、著者も研究を始めたばかりの頃はよくあったようだ。何度も依頼し、情熱を伝え、やっと貸し出しを了承してもらえた、という話が紹介されていた。
また、野外でのフィールドワークが多くなるため、アリに噛まれるのは勿論のこと、蚊やマダニなどに襲われるのは日常茶飯事のようだ。
地面に這いつくばりながらアリの引っ越しの様子を昼夜問わず、それも何時間も観察する上、毒をもつ動植物が周りにいることもある。デング熱、マラリアなども珍しくない環境下での活動は常に気が抜けない。著者含め、同じ研究者の方で慌てて病院に駆け込んだ、高熱が出た、などひやひやするエピソードが紹介されている。
それでも、アリの引っ越しを眺めている間は至福の時と語る著者。苦労以上に得られる研究の楽しさがこちらにも伝わってくる。
標本づくりのコツ、捕獲用器具の自作方法、フィールドワーク時の適切な服装など、若い研究者の参考になりそうな情報も満載だ。
調査・研究にかける著者の情熱を、ぜひ感じ取って欲しい。
「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」
【集英社】
三宅香帆/著
4月中旬発売後すぐに品切れ、重版待ちとなっていた話題書。 子どもの頃から本が好きだったという著者。好きな本を買って読み続けるため、就職する道を選ぶも、ある日、本を読めていないことに気づく。 社会人一年目、仕事は楽しく、休みの日も友人と会うなどして充実した社会人生活を送っていた。本を読む時間もある。だが本を読もうとして開いても、自然と目が閉じてしまう。気づけば手がスマホに伸びてSNSやyoutubeばかり見てしまう・・・ 著者の語る体験談に覚えがある方も多いのではないだろうか。 なぜ本が読めなくなってしまうのだろう? その原因とヒントを探るため、本と労働の歴史を比較しながら読み解いていく。 日本の労働の問題点とは? 読書好きの方必見の一冊。
≪今月の担当≫ 学園前店 社員 中西哲夫
先日ふと思い立って、大規模な部屋の模様替えを行った。
長年使っていた本棚やラックが、大きい割にいまひとつ使い勝手が良くないことや、もともと広くない部屋にベッドと、趣味で買い集めたCDやレコード、本などが棚に入りきらないくらいあって、さらに狭くなっていた状況を改善したくなったのだ。
数日かけて棚やベッドを撤去し、そこに新たに購入した本棚を置いた。
そして、雑然と積み上げられていた本や雑誌を、そこに並べていく。
今まで狭く感じていた部屋に、同じ空間とは思えないほどの開放感が生まれた。
大きめの本棚を購入したおかげでまだ収納に余裕があり、いまは、そこにどんな本を買って並べようかと考えている。
モノをため込む性格は、一向に治る気配がない。
GWは結局別の本に目移りしてしまい、予定通りの読破とはなりませんでした。まだ半分以上未読のページが残っていますが、引き続き、気長に読み進めて行こうと思います。
◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆
啓林堂書店ホームページ・外商部ページ( https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/ )にて、更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!
おすすめ児童書
『つめてつめて!』
【BL出版】カトリーナ・チャーマン/文 ギリェルメ・カルステン/絵 木坂涼/訳
おやすみの時間。動物たちは歯みがきをして、ベッドへ向かいます。全部で「10」匹。
にわとりが「つめてー!」と言うと、最初にのったライオンがベッドから落っこちちゃった!
ベッドの上は「9」匹になったよ。にわとりがまた「もっとつめてー!!」と言って、ベッドの上は「8」匹に。ページをめくると一匹ずつ落ちてカウントダウンしていくしかけになっています。みんなで数えてね。
外商部おすすめの奈良本
『武器としての土着思考』
【東洋経済新報社】青木 真兵/著6月19日発売予定
奈良県東吉野村への移住実践者で、人文系私設図書館「ルチャ・リブロ」主催者による「土着」論。「都市の原理」と「村の原理」に折り合いを付けながら、いかに世間へ「ルチャ」(格闘)を仕掛けるか。若き在野研究者が綴る、生きる勇気が湧いてくる「逆」自己啓発書。
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