5月号 2022.5.2啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/
店頭で気になり、思わず手に取ってしまった新書を今回はご紹介。
タイトルは『てんまる 日本語に革命をもたらした句読点』(PHP新書)。サブタイトルを見てもわかるように、“てんまる”とは句読点(、。)のことだが、皆さんは普段文章を書いたり読んだりするとき、てんまるの打ち方をどの程度意識されているだろうか?
例文でよく登場するのが「ここではきものをぬいでください」という一文。「履物」か「着物」か? てんを打つ場所によって意味が大きく変わってしまうことから、句読点は正しく伝えるために必須、という印象が強いが、意外にも明治時代までは必ずしも必要なもの、というわけでもなかったそうだ。
江戸時代まで、すべての文章は候文も含め、日本語ならではのリズムを基準に綴られるものだった。落語や講談、和歌なども人が読んでいるのを聞いて、耳で理解できるものが良いとされていたという。新聞なども書かれていることをすべて音読して読んでいたそうだ。
だが、声に出して読むとそれ以上に文章を早く読むことができない。早さを求めて文章は音読から黙読されるようになり、視覚的に区切りを見つけるためのてんまるが使われるようになっていった。
<第三章 明治時代以降の「てんまる」>では、当時活躍した文豪の文章を題材に考察がなされている。
森鴎外の『舞姫』の直筆原稿は、単行本と全集で、てんまるの使われ方が異なっている。てんまるの少ない直筆原稿に忠実な単行本。かたや適度にてんまるの補われた全集。なぜてんまるを補ったのか? 補ったのは果たして誰なのか? その背景に迫る。
<第五章 マンガの「てんまる」>では、実際に各出版社から発行されているマンガを取り寄せ、吹き出しの中に使われている、てんまるの実態を考察している。
著者によるとほとんどの出版社は、てんまるを使わない表現をしているのだが、小学館だけは、てんまるが登場しているのだそう。ただし、これは少年マンガや青年マンガに限ったもので、少女マンガでは見られない。この違いは何だろうか?
編集者への取材で得られたヒントなども活用しつつ、予想されるルーツが大変興味深かった。ぜひ本書を読んで確認してみて欲しい。
思いがけない歴史などにも触れ、てんまるの奥深さを読んでいて何度も感じた。読み進めていくうち、果たして自分の書き方で大丈夫なのだろうか、と少し不安になってきた。これを機に学び直しをするのもいいのかもしれない。
「世の中は奇跡であふれている 前向きになれる確率の話」
【WAVE出版】 鳥越規央/著
機内でお客様のなかにお医者様がいらっしゃる確率は89%、使ったお金が自分のもとに戻ってくる可能性は0.000000000547%…数字はとても正直で時に残酷なもの。だが、正しく現実を知ることで、数字を味方にすることもできる。 暗い話題が多い昨今。だが、意外にも世の中は悪くなっていない。 直感に左右されることなく、情報に偏ることもない確率(統計)は、自分の抱いているイメージと異なる場合が多いことを本書は示してくれている。自分の直感はあてにならないようだ。 さまざまなデータをもとに確率を示し、少し前向きになれる世界を紹介。ぱらぱらとページをめくってみて、気になる記事から読み進めていくのもオススメ!
≪今月の担当≫ 新大宮店 店長 小川岳志
本棚が気になる。 どういう事かというと、普段テレビを見ていると本棚が映る時がある。それは映画やドラマのワンシーンだったり、誰かの自宅にカメラが入った時などシチュエーションは様々だが、画面に本棚が映るとどうも気になって、そこにどんな本が並んでいるのか観察してしまうのだ。 映画やドラマの本棚はセットの一部として用意されたものであり、それはそれで面白いのだが、自宅の本棚の場合、持ち主の趣味嗜好が反映されていて一層興味深く、その人の頭の中を覗いているような気にもなる。書店員にも職業病というものがいろいろあるが、これもその一つなのかもしれない。
GW前は財布のひもがゆるみがちです。気を付けなくては! と思うものの、GWなら時間もいつもよりあるし、折角だし…と買う本のハードルもついつい下がりがちです。積読してる本はどうする? と自分に問いかけますが、どっちも読むからとやはり手が伸び…
◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆
啓林堂書店ホームページ・外商部ページ( https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/ )にて、更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!
おすすめ児童書
『アリのかぞく』【福音館書店】島田拓/文、大島加奈子/絵
普段よく見るアリ。道のすみを列になって歩いていることもありますね。 そのアリの巣は地面の中にあります。巣の中はどうなっているのでしょう。アリはどのように増えていくのでしょう。 女王アリが一匹で巣を作り、卵を産み、その後家族を増やしていく様子がよくわかります。
外商部おすすめの奈良本
『律令制国家の理念と実像』【八木書店】吉村武彦/編5月2日発売予定
律令法の施行により法治国家として整備された日本古代国家。
新たな法の理念と、従来の慣習による実態とを、具体的・多角的に検証。文献史学・考古学の研究者16名が、最新研究を書き下ろし。
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