6月号 2023.6.1啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/
今回ご紹介する本は、「ナマケモノは、なぜ怠けるのか? 生き物の個性と進化のふしぎ」(筑摩書房)。 本書は、普段脇役で「つまらない」と思われがちな生き物たちに焦点を当て、それぞれの自然界を生き抜くための生存戦略について迫っていく内容になっている。
例えばナメクジ。ナメクジはカタツムリのなりそこないのような、一見頼りない姿をしている。ナメクジの通った後はねばねばしていて気持ち悪いという声も聞こえてきそうだ。 カタツムリは殻を背負っていて、捕食者に狙われてもその中にすぐさま逃げ込むことができるが、ナメクジにはそれができない。殻がないので体の乾燥も大敵だ。そのため、ナメクジは塩をかけるとしぼんでしまう姿の通り、外からの攻撃にはめっぽう弱いといった印象がある。
だが、ナメクジは身を守る殻を捨てたことで、岩陰などのわずかなすき間にも自分の小さな体を隠すことを可能にした。一番の利点は、殻を捨てたことで殻の維持にかけていた労力がなくなったことだろう。 カタツムリの殻を維持するには、炭酸カルシウムの摂取が欠かせない。元々は貝の仲間であるカタツムリ。よくブロック塀に張り付いている姿を目撃するが、これは陸で不足しがちな炭酸カルシウムをカタツムリがブロック塀から摂取しているからである。 カタツムリとどちらが優れているかという話ではない。ナメクジはナメクジの、カタツムリはカタツムリの長所を生かした生存戦略をとっているのである。
他にも本書には様々な動物が登場する。 例えばブタ。ついつい誘惑に負けて甘いものや脂っこいものを食べてしまったとき、私たちは「ブタになる」と言うことがある。 だが、ブタの体は筋肉質で実は太ってなどいない。その体脂肪率、なんとスーパーモデル並に低い約15%以下! ブタに失礼極まりない。今度からは誉め言葉として受けとらなければならないだろう。 なお、本書タイトルになっている「ナマケモノ」も登場している。なぜそんなにゆったりとした行動をとるのか・・・もちろんちゃんとした理由があるので、本書でぜひ確認してみて欲しい。
一見弱点に思えることでも、見方を変えれば強みになることがある。他の能力を伸ばすため、元々あった能力をあえて捨てて進化してきた生き物もおり、生き物の進化における奥深さが実感できることだろう。
そんな私たち人間も生き物の仲間。基本二足歩行で、目は二つ、心臓は一つ・・・と、おおよその体の特徴は決まっている。 だが、得意分野には個体差がある。運動の得意な人、語学が堪能な人、絵のうまい人・・・これらの能力になぜ違いがあるかというと、自然においては正解が決まっていないからだ。一般的に私たちが「個性」と呼んでいるものである。なお、人間の「個性」も生存戦略の一つなのだが・・・詳細は本書にて!
最終章まで読み進めていくと、自身の不得手のひとつやふたつは気にならなくなっているはずだ。おすすめ!
「にっぽんのスズメ」
【カンゼン】
小宮輝之/監修 中野さとる/写真 ポンプラボ/編集
私たちの日常でも身近な野鳥、スズメ。彼らは普段どのような生活を送っているのだろうか? ある日は仲間たちと身を寄せ合ってひなたぼっこ。寒い日には防寒着代わりに毛をたくわえてふくらスズメに変身! 羽を清潔に保つのに欠かせない日課の砂浴びの風景や、親鳥に餌をねだるヒナの愛らしい様子などが、至近距離で撮影された写真と共に紹介される。 スズメの幼鳥と成鳥の見分け方の一つは、くちばしの色なのだそう。たむろしているスズメたちをじっくり観察してみたくなる。 昨年10月に刊行されてから、すでに3度目の重版だというから驚きだ。写真集とガイドが1冊になったスズメの魅力を存分に堪能できる本。おすすめ!
≪今月の担当≫ 生駒店 社員 𠮷田 晏菜
小さい頃は絵本に触れ合い育ってきたのに、勉強や部活に追われ読書の機会を失ってきた。 本屋で働くことになり、棚整理をしていると小さい頃に読んでいた絵本に再会し心が躍った。 そのことを母に話すと、あの絵本は母の小さい頃に読んだ思い出の絵本だと判明した。 親から子、子から孫に思いを込め、思い出と共に贈られるものなのだなと感じた。
先日、久々にシリーズで大人買いをしてしまいました。面白い本ほどすらすら読めてしまうものですが、残り冊数が少なくなるにつれ、もったいない気分になってしまいます。楽しい時間は永遠に続いて欲しいものです。
◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆
啓林堂書店ホームページ・外商部ページ( https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/ )にて、更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!
おすすめ児童書
『わにくんのレインコート』
【BL出版】みやざきひろかず/作・絵
ワニくんは赤いレインコートを買ってもらいました。 早く雨が降らないかな~と待っているワニくん。でも今日は晴れ、明日も晴れ、ずーっと晴れ。 どうしよう・・・ ワニくんはレインコートを着ることができるかな。
外商部おすすめの奈良本
『新装版 平城京のごみ図鑑』
【河出書房新社】
6月13日発売予定
奈良の都・平城京の発掘調査に携わる、独立行政法人国立文化財機構の研究所。 展示施設「平城宮跡資料館」では、最新の研究成果も紹介。「出土品から何がわかるのか」という考古学の魅力を楽しむことができる。
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