1月号 2020.1.1啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/
“僕がこれから話すことは、役に立つことではありません。ただし、役に立てることはできます。よく「学校の勉強なんか実社会では役に立たないじゃん」というようなことを言う人がいますよね。でも、それは役に立たないのではなくて、役に立てることができないというだけです。(中略)僕がこれから話すことをそのまま聞いて、「ああ、役に立つな」なんて思わないでください。役に立てるにはどうしたらいいかを考えてください。”
学校では教えてくれない本物の知恵を伝える白熱授業「 17 歳の特別教室シリーズ」の最新刊、京極夏彦の『 地獄の楽しみ方 17歳の特別教室 』(講談社)をご紹介。冒頭は「はじめに」の引用である。
本書は 2019 年 7 月 27 日に講談社で一般公募の 15 ~ 19 歳の聴講生 50 名を対象に行われた特別授業を構成したものだ。京極夏彦と言えば分厚い本が代名詞だが、本書は小説ではないため厚みも 1.5 センチほどと普通。地獄のようなこの世を生き抜くための「言葉」徹底講座、と紹介されているとおり、「言葉」についての話題が中心となっている。
言葉は伝わらないものである。普段何気なく使っているが、私たちの抱く気持ちは単純ではなく様々に入り混じったものだからだ。
私たちは相手に気持ちを伝えるため言葉にする。だが言葉は自分の気持ちの一部を抽出したもののため、切り捨てている部分がどうしてもでてくる。それでも特に問題が起きず、話が通じているため相手に伝わったと私たちは勝手に思っているが、実際は相手は自分とは違う受け取り方をしている可能性がある。
「言葉は不完全」「人は言葉の欠けを勝手に補完する」・・・ SNS の炎上が度々話題になるが、言葉について今一度改めて考える必要があると認識させられる。言葉の欠点を意識するのとしないのとでは言葉との向き合い方も大きく変わるだろう。
その一方で、「あらゆる読書は誤読」とし、小説は読み手がどう受け取るかは自由、多様な読み方ができる方が良く、誤読されるのも見越した上という京極夏彦のスタンスは、作家の実力があってこそのものだと感じた。流石は大御所作家である。
「夢」「絆」「愛」。キャッチコピーなどでよく見かけるが、心地の良い言葉は要注意。きれいで単純な一言で何か誤魔化そうとしているのかもしれない。自分で言葉にするときは他の表現がないか考え、よりぴったりとした表現を探す必要があるとのこと。そのため、語彙を増やすことの重要性が語られている。なお、本を読むのは楽しいとする京極夏彦、書くのは嫌いだとのこと。あんなに長い小説を書いているのに、である。
なお、巻末のQ&Aは聴講生とのやりとりになっているのだが、こちらも面白い。特に本の収納の話は読書家必見。本棚を前後2段にする前に、横積みにする前にまだやれることがある。
繰り返し読むと又理解も深まる。ぜひじっくりと読んでみて欲しい。おすすめ!
「学校に入り込むニセ科学 」
【平凡社】左巻健男/著
一見科学的な装いをしながら、実際には科学的な根拠はなく、教員や生徒の「善意」を利用して勢力拡大を目論むニセ科学に鋭く斬りこむ。科学があまり得意ではないが、科学は大事であるとなんとなく認識をしている人は要注意。怪しげな健康食品を買ってしまったことはないだろうか?本書に紹介されている『水からの伝言』(水伝)では、水に「ありがとう」などのきれいな言葉をかけるときれいな形の結晶ができ、「ばかやろう」などの汚い言葉をかけると崩れた形の結晶になる、という理論が展開される。当然水は言葉など理解しない。説明に使われている結晶の写真が撮影された環境条件(温度など)が異なるだけで、人が水にかける言葉は全くの無関係という単純なカラクリであるが、過去これを信じて、水も言葉を理解する、だから普段もきれいな言葉を使おう、という文脈で教員が教育の場に持ち込む事例があった。根拠のないニセ科学を見抜く目を培うにはどうすればよいのか。学校の土台が揺るぎかねない事態に著者が警鐘を鳴らす。
≪今月の担当≫ ジュンク堂書店奈良店 社員 渡部大輔
「本が好きなんですか?」 初めて会う人に本屋で働いていると言うと必ずと言っていいほど聞かれる言葉である。 単純に「はい」と答えればいいのだが私は、いつも答えに困ってしまう。なぜなら月に1冊程度しか本を読む事が出来ず本好きの人たちと比べるとあまりにも読んでいる量が少なく自信をもって言えないからである 確かに本が好きでこの仕事しているは事実だが読もうと思って買った本はどんどん溜まっていき積読が増えていくばかり…。 私が「本好き」と言える日は、まだまだ先の日かもしれない。
あけましておめでとうございます。初詣は神様にお願いをするのではなく、決意表明をするもの、と紹介した『地獄の楽しみ方 17歳の特別教室』の中に紹介がありました。では何のために決意表明するのでしょう? 詳細はぜひ本書でご確認ください!
◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆
啓林堂書店ホームページ・外商部ページ(https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/)にて
更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!
おすすめ児童書」「おすすめの奈良本」2月号は、1月下旬に更新予定です!お見逃しなく!
おすすめ児童書
『おもちのきもち 』【講談社】かがくいひろし/作・絵
たごさくさん家の床の間に飾られた鏡餅。鏡餅には悩みがありました。ペッタンペッタン頭をたたかれ兄弟たちは伸ばされたり、ちぎられたり、ねばねばの納豆をまぜられたり…。いつ食べられてしまうか不安になった鏡餅は逃げ出すことにしました! さてどうなるかな?みんなを笑顔にしてくれる絵本です。
おすすめ奈良本『 「王」と呼ばれた皇族 古代・中世皇統の末流 』【吉川弘文館】赤坂恒明/著 日本史史料研究会/監修
日本の皇族の一員でありながら、これまで十分に知られることのなかった「王」。平将門の乱を扇動した興(おき)世(よ)王、源平合戦を引き起こした以仁(もちひと)王、天皇に成り損ねた忠成王など、有名・無名のさまざまな「王」たちの事績を、逸話も織り交ぜて紹介。影が薄い彼らに光を当て、日本史上に位置づける。皇族の周縁部から皇室制度史の全体像に迫る初めての書。
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