8月号 2023.8.1
啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/
若者の読書離れが進んでいると言われて久しい。「若者の本離れが進んでいる」「歯ごたえのある文学を読まなくなった」と教育関係者、メディアはしばしば語るが、果たして実際にそうなのだろうか?
今回ご紹介するのは「「若者の読書離れ」というウソ 中高生はどのくらい、どんな本を読んでいるのか」(平凡新書)。
本書では中高生がどのくらい、どんな本を読んでいるかについて、データの考察を行う。
本書によると、この20年間で小中学生の平均読書冊数はV字回復しているという。小中学校に導入された朝の読書の時間が大きく貢献しているようだ。面白いことにこれらのデータが示しているのは、今の高校生や大学生は少なくとも日本人全体と同じくらい、小中学生に至っては大人よりもはるかに多く本を読んでいるという結果である。
ではなぜ、「若者は本を読まない」という事実と異なる説が、今も当たり前のように語られ続けているのだろうか。
例えば、自治体の読書調査などでたまたま不読率が前年比よりも上がったとする。すると現代では「本離れ」と新聞が騒ぎ、SNSで瞬く間に拡散されるのが容易に予想できる。だが逆に、不読率が改善された時はほとんど話題にならないのではないだろうか。私たちが受け取る情報には偏りがあると、常に念頭に置いておく必要があるだろう。
また他の原因としては、「大人が読ませたい本」と「子どもの読みたい本」にギャップがあることがあげられる。
子どもに本を読んでほしいと思うような大人は、おそらく平均以上に本が好きな人間だ。当然、平均的な中高生から見えている本の世界と、月に何冊も本を読むような読書家の見えている本の世界には隔たりがある。
日本人全体で見ると、一カ月に本を1冊以上読む人の割合は2人に1人。その「平均的な大人」も大多数は歯ごたえのある本ではなく、わかりやすい本を好んで読んでいる。少数派の本好きの大人が、子ども・若者に対して、大人全体の平均以上の読書量や高度な内容の本の読書を望むのは、そもそものハードルが高い。「本好きの大人が望む読書量に達していない」というのと、「若者が本を読まない」というのは別の話だ。混同しないよう注意する必要がある。
では、実際に若者が読んでいるのはどのような本なのだろうか。
本書では若者に読まれている本のタイトルとあらすじが多数取り上げられているが、ここでも昔のイメージのままで更新されていない情報があったり、勝手な思い込みがあったりすることに気づかされる。ラノベ市場の読者層の変化、短編集の需要拡大など、見所は多い。
中高生が本に求める「三大ニーズ」は、「正負両方に感情を揺さぶる」「思春期の自意識、反抗心、本音に訴える」「読む前から得られる感情がわかり、読みやすい」ことだという。また、これらを効率的に満たすための物語の「四つの型」が紹介されているのだが、詳細については本書を確認してみて欲しい。
若者の読書についての「思い込み」を打ち破る一冊。批判の前に現実をそのまま受け入れる姿勢が大切だ、と本書は示してくれている。
うみのなか中学校に通うタコジローは、学校に自分の居場所がなく、タコである自分のことが大嫌い。だが、不思議なヤドカリおじさんと出会った日から、少しずつ考えが変わって・・・
物語の主人公であるタコジローの視点から、自分の頭で考えることの大切さを読み解いていく。自分で考えることをやめて、誰かの出した答えに安直に飛びついていないだろうか? SNSで常に人とつながることの多くなった現代だからこそ、ヤドカリおじさんの話はとても考えさせられる。
本書では自分と対話をするために、文章に書くことを推奨している。書くのは苦手、面倒だと感じている方ほど本書を一読してみてほしい。挿絵の美しさも見どころ。タコジローと一緒に自分を見つめなおしてみては?
≪今月の担当≫ 外商部 社員 上田輝美
私の本のたまり場は二階にある。昔から興味の赴くままに本を買ってしまうために、築き上げた本の山がいよいよ危険なレベルに達してしまった。このままだと山が崩れるだけで済まず、床に穴が空く可能性すらある。早急に対処しなければならない。
すっかり情報の古くなってしまった本、自分に合わず読み返す可能性が限りなくゼロに近い本を選別していく。だが早々、未読の本が山の中に埋もれているのを発見。一体いつ紛れこんだのか? それすらまるで思い出せない。
何とか1/10ほど冊数を減らしたところで作業を中断。取捨選択の連続は異様に疲れる。疲れを癒すためと言い訳してまた今日も本を2冊買ってきてしまった。つまりは2冊捨てないと現状すら維持できない。私は考えるのをやめた。
夏真っ盛り! この時期の夏の文庫フェアを毎年楽しみにしています。もらえるしおりは勿論のこと、知らなかったロングセラー作品に思いがけず出会えるのも嬉しいところ。今年こそ、普段なかなか読めない少し難しい本にもチャレンジしたいなと思っています。
◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆
啓林堂書店ホームページ・外商部ページ( https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/ )にて、
更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!
おいしいすいかの選び方、知っていますか?
おじいちゃんは知っています。すいかをたたいて鳴った音を聞いたらわかるんです。
どんな音かな? 真っ赤なすいか、おいしそう。
やっぱり夏はすいかですね。今すぐ食べたくなっちゃう絵本です。
時は大正。舞台は日本で最も美しい監獄。繊細な数学教師×天真爛漫な印刷工。
無実の罪で収監された凸凹バディの武器は、頭脳と胆力。
監獄は人が作ったものに過ぎない。僕が、この問題を解いてみせる。
数学教師の弓削は冤罪で捕まり、日本初の西洋式監獄である奈良監獄に収監されていた。ある日、殺人と放火の罪で無期懲役刑となった印刷工の羽嶋が収監される。羽嶋も自分と同じく冤罪だったことを知った弓削は、彼とともに脱獄をたくらむ。典獄からの嫌がらせ。看守の暴力で亡くなった友人。奈良監獄を作った先輩からの期待。嵐の夜、ついに脱獄を実行する。人気BL作家が描く、究極の友情。
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