9月号 2022.9.1啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/8
本の帯にひかれ、また思わず手に取ってしまった。
今回ご紹介する本は『「忘れる」力』(潮文庫)。著者はベストセラー『思考の整理学』で知られる外山滋比古氏だ。著者の体験に基づく気づきや発見が、楽しく読めるエッセイ27編として収録されている。
私は何でもすぐに忘れてしまう頭をしている。人の顔や名前、ひどければ自分が今さっきやろうとしていたこと、三歩歩けば、ではないが呆れるくらいするっと頭から抜けてしまう。本を読むことは好きだが、しっかり読んだはずの本の内容が思い出せないことなどしょっちゅうである。もともと脳容量が足りないのだろう。
記憶力の良い人がうらやましい限りだと思っていたが、忘れることは悪いことばかりでもないらしい。
帯にも登場する「健忘のススメ」の章ではこう語られる。「われわれは、忘却によって、頭がよくなっている。忘れるのを恐れるのは誤りである。そういえば、かつては、よく忘れるのを“健忘”といい、健忘症という言い方があった。健という文字はダテではないような気がする。」
忘れることによって、頭の中がすっきりと整理され、次の新しいことを私たちは覚えることができるようになる。そう思えば、忘れてしまうことも少しは前向きに考えられそうだ。
他にも頭を有効活用する方法として、睡眠と散歩が挙げられている。
時間がないからと夜更かしをしたときより、夜ぐっすり眠ったあとの朝の方が頭がすっきりして勉強も仕事もはかどる。覚えのある方も多いのではないだろうか。昨日の夜に解決できなかった問題を、次の日の朝になってから考えるとするする解ける。そんな体験を通して夜型から朝型へ切り替えたという著者。睡眠の大切さを実感したあと、実践してみたのは昼の睡眠時間の確保だった。
単に昼寝と呼ばず、又寝と命名してみるところに著者のお茶目さを感じる。ただ、日本における散歩は、実践するにも少し肩が凝りそうだ。詳しい内容はぜひ本文で確かめてみて欲しい。
また、日本語をはじめとして英語にも造詣の深い著者。なぜ日本人は英語を聞き取るのが苦手なのだろうか?
これは日本語の構造が、冒頭が軽く末尾が重い後方重心型をしているから。日本語は話しはじめを聞き落としても大きな問題にはならならないことが多い。話の最後に結末がひっくり返る、ということもよくある。そんな耳の感覚を培っている日本人には、日本語とは正反対の構造をしている英語の前方重心型がどうしても聞き取りにくいようだ。日本語の構造に慣れているがための弊害である。
日本語独特のニュアンス、使い方、文法。これも独自に進化をとげた一種の島国文化なのだろうか。興味深い。
ほかにも日本語、英語、広く言葉について、様々な視点から掘り下げようと試みる著者の視点が面白い。
読みやすい文章が時がたつのを忘れさせ、あっという間に読み終えてしまった。オススメ!
「いま、この惑星で起きていること 気象予報士の眼に映る世界」
【岩波ジュニア新書】
森さやか/著
ゲリラ豪雨という言葉が珍しくなくなった昨今。台風よりも激しい雨が降るなど、今までにあまり見られなかった傾向が珍しくなくなりつつある。
近年まれにみる異常気象は、日本だけでなく世界全体の問題だ。地球温暖化による悪影響は海面水位の上昇だけに留まらない。実際、当初は予期していなかったところにも様々な影響を及ぼし始めているという。
今地球に何が起こっているのか? そして今の私たちに何ができるのか? 雑誌『世界』の人気連載にコラムを追加して1冊に。現在の地球の問題に迫る。
≪今月の担当≫ 外商部 社員 表野弘樹
5月20日で啓林堂書店新大宮店が閉店しました。私はアルバイトとして新大宮店に採用され、今日に至ります。
最終営業日には店に顔を出すことができ、パートさんとの思い出話や常連のお客様を見かけたりして、当時のことを思い出して懐かしい気持ちになりました。同時に、閉店してしまうんだなぁと切なく感じました。
このコラムの名の通り「私と本」を出会わせてくれた新大宮店に感謝!
気に入っているシリーズの本が、なぜかどんどん発行されなくなっていきます。題材が難しいのだろうなとは思うものの、二年も空いてしまうと前回どんな話だったかをすぐに思い出すことができません。
発売日が決まったら前の巻を読み返してみよう、とは思うのですが、発売予定表を眺めてみても、まだまだ予定は未定のようで・・・
◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆
啓林堂書店ホームページ・外商部ページ( https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/ )にて、更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!
おすすめ児童書
『とてもおおきなサンマのひらき』
【ブロンズ新社】
岡田よしたか/作
またやさんが市場に行くと、びっくりするほどおおきなサンマのひらきが売っていました。
友だちみんなで食べようと買って帰ります。さあ、焼いて食べるぞー!
するとサンマが暴れてどこかへ飛んでいってしまいました・・・次の日はおおきなスルメ。無事食べられるか!?
奇想天外なお話、リズムのいい関西弁で書かれていて、おもしろさ倍増です。
外商部おすすめの奈良本
『人物で学ぶ日本古代史 2』【吉川弘文館】新古代史の会/編集9月28日発売予定
飛鳥の地を離れ、奈良の平城京に都をおいてから80年。律令体制が整えられ、天平文化が華開きながらも政争に明け暮れた時代を人びとはどう生きたのか。聖武天皇や藤原仲麻呂などの政治の中心人物のほか、留学生、地方で躍動した豪族、懸命に働いた女官、下級官人などあまり知られていない人物の魅力を解説。当時の社会を生き生きと描き出す。
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