8月号 2024.8.1啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/
自分のやっていることに意味があるのか。自分に存在価値があるのか。大切なものを探しているけど、まったく見つからない。何をやっても、砂をかむようで、苦く味気がない。徒労感を覚え、心にぽっかりと穴があき、そこを風が吹き抜ける。むなしい――。(「序章 「むなしさ」という感覚」より)
今回ご紹介する本は、「「むなしさ」の味わい方」(岩波新書)。
誰もが一度は抱いたことがあるであろう、漠然とした「むなしい」という感覚は、現代社会では無駄であったり、恐ろしいことだと否定的に捉えられる向きがあるようだ。できればそんなことは考えない方がいい、余計なことを考えてしまう「間」はない方がよい、できるだけ排除すべき恐ろしいもの――人々の間でそんな認識がなされているように思える。
便利な現代社会は、簡単に「間」を埋められるものであふれかえっている。
例えばかつてのテレビには、深夜になると何の放送もされていない空白の時間帯が存在していた。だが、今のテレビは有料も含めればかなりのチャンネル数が存在している。地上波だけではなく、BS、CS、ケーブルテレビと、チャンネルを回せばどの時間帯でも何らかの番組が視聴できる状態だ。
「間」を埋める、と聞いて真っ先に思い浮かぶツールはスマホだろうか。手元の操作一つでインターネットにアクセスでき、いつでも好きなときに自分に必要な情報が得られる。各種配信サービスを利用すればドラマも映画も見放題。SNSを活用すれば世界中の人々と簡単につながることもできる。そこに「間」の入り込む余地はない。
だが、現代社会は「間」をなくすことばかりに熱心になっていて、人々が「むなしさ」を感じることに慣れていない。精神状態によっては思いがけない「むなしさ」に圧倒され、いともたやすく自分が呑み込まれそうになってしまう。「むなしさ」への適切な対処法を知っておかなければ、うつ病など、深刻な病理の原因になってしまう可能性もあるのだ。
では、そんな漠然とした「むなしさ」に私たちはどう向き合っていけばいいのか。本書ではそのヒントを探っていく。
私たちはいつから「むなしさ」を感じるようになったのか? まだ私たちが生まれてくる前、母親と一体だったころから幼少期にかけての母親との関わり方、大人になっていくまでの過程を紐解くと、興味深い結果が垣間見えてくる。また、著者の語る実体験に思いがけず私は衝撃を覚えた。詳細についてはぜひ、本書にて確認してみて欲しい。
生きていく上で、「むなしさ」を完全に排除することはできない。「むなしさ」は誰にも当たり前に訪れ、付き合わざるを得ないものだからだ。だからこそ、私たちは「むなしさ」の正体知り、自分自身に合った付き合い方を考える必要がある。
本書を通してぜひ、自分の「むなしさ」との付き合い方を、今一度考えてみて欲しい。
「辞書には載っていない!?日本語」
【青春新書】
高村史司/著
本書で紹介されているのは、隠語や業界用語、洒落言葉などといった、普段あまり聞き馴染みのない言葉だ。客商売の場合は、客に知られたくない話を従業員同士で密かにやりとりをする場面がどうしても出てくるため、少しひねりを効かせた特殊な言葉が生まれやすいということらしい。
例えば寿司屋で登場する「兄貴」と「弟」は、それぞれ寿司ネタの古い、新しいを指す。こっちが「兄貴」、と伝えれば先に消費したいネタがどちらか分かるという寸法だ。少し洒落ているのはお坊さんのお酒の呼び方。お坊さんは表向き飲酒禁止の姿勢をとっているため、お酒をたしなむ場面でも、お酒と分からない呼び方をしているのが面白いのだが・・・
紹介されている言葉は、いずれも業界の特色が滲み出ていて個性がある。なお書店業界からは面陳、棚差し、といった本の陳列方法に関する言葉が紹介されていた。日本語の奥深さが味わえる一冊。
≪今月の担当≫ 外商部 社員 表野弘樹
寝る前のスマホが睡眠に悪影響を及ぼす。とよく聞きます。画面の光で脳が覚醒してしまうそうです。 では読書はどうか?調べると20分程の読書はリラックスできて寝付きがよくなり、睡眠の質が高まるとのこと。 早速寝る前に読書タイムを導入したところ、前書きのところで寝てしまいました。読書の効果かそれとも最近の暑さにやられたのか… 今日は1章目に突入するのが目標です。
部屋の電気が唐突につかなくなりました。どうやら電球ではなく古い電気傘がダメになってしまったよう。夜の読書が全く進まないので、これではいけないとすぐさま電気屋に直行。細かく明るさを調整できるシーリングライトを購入したのですが、読書するのに適切な明るさが未だにつかめずにいます。
◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆
啓林堂書店ホームページ・外商部ページ( https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/ )にて、更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!
おすすめ児童書
『とこやのザリガニータ』
【ひかりのくに】タツトミ カオ/作・絵
はさみが自慢のザリガニータは小川のほとりで見習いのサワガニッチと床屋をしています。その腕前は評判で、店はいつもお客さんでいっぱいです。 ある日大きな鳥に店をつぶされそうになり、ザリガニータは戦いましたが、片方のはさみが取れてしまいました。大丈夫? ザリガニの生態も知ることができる楽しいおはなしです。夏の野菜や生き物もたくさん登場しますよ。
外商部おすすめの奈良本
『東大寺の瓦工』
【吉川弘文館】森郁夫/著8月14日発売予定
奈良時代より1200年間、風雨から堂塔を守ってきた瓦に光を当て浮かび上がる職人たちの奮闘を活写。瓦作りから東大寺造営に迫る。
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