3月号 2022.3.1
啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/
身に覚えのあるタイトルに、思わず目を止めてしまった。
今回ご紹介するのは『図鑑を見ても名前がわからないのはなぜか? 生きものの“同定”でつまずく理由を考えてみる』(ベレ出版)。
道端に咲いている花の名前が気になったり、見つけた鳥の名前が気になったりして、図鑑を引いてみたことがある方も多いのではないだろうか。だが、上手くその図鑑を使いこなせたかと言われると、私自身はあまり自信がない。開いてみたページに似たような種類のものが紹介されていた記憶があり、正解だったかどうかが今も自分では分からないのだ。
著者によると、名を知らぬものは、視界に入っても「景色の一部」として処理されるため、注目しても、どんな特徴を持った存在なのかといった情報を、頭の中で付加しにくいのだそう。
自分の目の前にある生物や植物などの身元を調べ、名前を確定させる作業のこと「同定」と言う。
私達は図鑑などを参照して、気になる生物の名前を特定しようと試みるわけだが、普段見慣れていないものを目にしても、見るべき特徴を見逃してしまうことがある。これでは正しく「同定」することができない。
また、図鑑を作っている人たちは専門家で、普段鳥や虫、植物などを見慣れている人ばかりである。一方、私達は調べようとしている生物たちのことを大抵はよく知らない。普段見慣れていない人たちばかり、ということがほとんどのはずだ。
専門家の先生は私達の普段の目とは違う目で生物たちのことを見、図鑑にその特徴などを説明として加える。結果、私達との間に認識のずれが生じ、「同定」の作業を難しくしてしまっている可能性もあると言える。
「同定」ができるようになる目はどのように養われていくのだろうか?
本書ではあえて明確な答えを示さずに、「同定」の作業を読者が何度もこなすことで、自身の考えを深めていく構成になっている。
第2章以降、私達は本格的に「同定」させるためのトレーニングを積んでいくことになるのだが、問題に登場する蚊すらも、私には見分けるのは難しかった。いかに普段虫をよく見ていないか! 蚊だと思って無関係の羽虫を潰していた可能性が大いにある。
また同様に、ウグイスを見分ける問題も難しい。色味が似ている鳥が並んでいるのだが、あなたには分かるだろうか?
初見は問題を見ても、どれも同じでは? と疑いたくなるのだが、何度も問題を解いていると、不思議と全然違う! ということが分かるようになってくる。真面目に問題に取り組むことで、今までの自分とは違う見え方をする目がきっと手に入れられるはずだ。
ぜひ、世界の解像度が上がったという実感と体験をしてみて欲しい。おすすめ!
【ニュートンプレス】
いつか終わりをむかえると考えられている宇宙。
一体宇宙に何が起こるのか?
「宇宙がほとんど空っぽになる」「宇宙が1点につぶれる」「宇宙が引き裂かれる」…諸説ある宇宙の終わりを最新の科学で考える。
ブラックホールのことを考え出すと、何だか不安になってくる。果たして人間は宇宙をどこまで正確に捉え、理解することができるのか?読み進めているうち、普段触れている常識や日常感覚が全く通用しないのではないかという不安に少し襲われた。
偉人の逸話に触れたコラムにも要注目!
≪今月の担当≫ 生駒店 店長 松井典子
幼い子どもの世界といえば、自分の家や学校、歩いたことがあるところ。その遥か先に湾岸戦争の爆撃やユーゴ紛争の銃撃があるなんて、幼い私には理解ができなかった。ブラウン管が映す現実味のない現実はただ恐いもので、見たくなかった。
学生時代に契機となる1冊に出会う。ユーゴ紛争を題材にした『さよなら、妖精』(米澤穂信/東京創元社)だ。主人公の行動や願い・苦悩を追体験したことで、幼い日に見た映像が、自分の世界と繋がった。どう目を背けてもあの紛争は現実だぞと、フィクションに教えられた。勉強しなければと思った。
そして2021年。ユーゴ解体から30年、調べ学習を始めて20年近くになる。関連する大きな裁判が終わった年でもある。そして歴史学者の柴宜弘先生が他界された。ユーゴ問題の考え方や今後の展望、多くを柴先生の著書から学んだ。紛争は歴史になりつつあるがまだ風化していない。私の学習も、まだ終わることはないだろう。
これはアタリじゃないかな? 読んだ方がいいかな? と思って読んだ本が予想通りにアタリだった時、ひとり心の中でガッツポーズをしています。人にオススメしてお墨付きをもらえた時はもっと嬉しくなります。すてきな本に出会えた時が、いつでも至福の時間です。
◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆
啓林堂書店ホームページ・外商部ページ( https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/ )にて、
更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!
とてもちいさなじっちょりんの家族は団地のすみに住んでいます。朝ごはんは花びらや葉っぱです。種は食べずに集めて、コンクリートの道や壁のすきまに植えていきます。
道のすみに咲いている花はじっちょりんが植えたのかもしれませんね。
かたばみやなずななど、花の名前もわかります。
発見時の鮮やかだった高松塚壁画群が、国宝となり文化庁が管理する間に、カビの大発生、作業時の損傷、そして石室解体へ。壁画劣化は防げなかったのか? 古代史ブームを巻き起こした高松塚壁画がたどった道のりを新聞記者が丹念に追ったルポルタージュ。
「世界に例を見ない極上の壁画を後世に残そうと努力を重ね、格闘した担当者たちの苦悩があったことも事実だろう。だからこそ私は、高松塚古墳の壁画はなぜ、「白虎」の描線が消えたり、「飛鳥美人」や「青龍」が黒カビに汚染されたりするほどに劣化したのかを問いたい。」
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