7月号 2021.7.1啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/
ささいな日常の謎を数学的視点から読み解く『まるさんかく論理学 数学的センスをみがく』(中公文庫)を今回はご紹介。
本書は、登場人物の野崎先生が、高校生のRさんとM君と共に討論する形で進んでいく。
左右を反転させる鏡はなぜ上下はさかさまにならないの? 珍しい車のナンバーはゾロ目か連番か? など、日常にも関わる素朴な疑問がやさしい語り口で解説されている。本書に紹介されている問題の例をいくつか見てみたい。
ここに2つの時計がかかっている。両方ともきっかり2時を示しているが、一つは1日に1時間遅れるオンボロ時計、もう一つは半年前から止まっている時計だ。では、この二つの時計のうち、どちらが正確な時計と言えるだろう?
『不思議の国のアリス』の著者で知られるルイス・キャロルの茶目っ気を感じられる回答に要注目。言葉の定義の大切さを改めて感じる問題だった。
次の問いはこんなもの。「私のおじいちゃんのうちの一人は、私の孫のうちの一人と同一人物です」という場合、いくつか答えが考えられるが、現実的でエレガントな解答はどうなるか?
これはスイスで実際にあった話らしい。なお、名前を継いだ、生まれ代わりを本人が主張しているなどではなく、文字通り同一人物だとすると条件がつく。
息子がおじいさんを養子にもらう、孫娘が自分の祖父と結婚する、というのがRさんとM君の解答。これも正解。では先生が示した実在のケースとは・・・?
3人の生徒に先生が帽子をかぶせていく。前からA君、B君、C君とし、帽子は順に赤、白、白になっている。生徒は自分より前に座っている子の帽子しか見えないのだが、先生はまず、C君に「あなたの帽子は何色ですか」と聞く、次にB君、A君の順に同じことを聞くのだが、誰か自分の色が分かった人はいるだろうか? という問題。
この問題にはヒントがある。ひとつは「帽子の色は赤、白の2種類だけ。3人のうち少なくとも1人は赤だということだ。さて、あなたはこの答えが分かるだろうか?
パズル感覚で思考力が養える。単行本が発行されてから文庫に収録されるまでの間に、少々古くなってしまった情報も中には見受けられるが、問題を読みながらじっくり考える楽しさは健在だ。
本書に紹介した問題の答え合わせだけでなく、ぜひ本書を読んで問題を考える楽しさを、ぜひ味わってみて欲しい。
「土葬の村」【講談社】 高橋繁行/著
現代ではほぼなじみのなくなった“土葬”。 棺をそのまま土に埋める埋葬方法のひとつだという知識はあっても、実際どのように行われていたのかまで知る人は少ない。これは古くより土葬の文化が根付いていた土地にも言え、土葬の文化は急送に失われつつあると著者は言う。 生前土葬を希望された方の意思を汲み、いざ土葬を行おうとしても、土葬を行うための知識も、人出も今の村には不足している・・・そんな現状が本書では浮き彫りになっている。 土葬はこのまま、日本の風土から完全に消滅してしまうのだろうか? 失われつつある弔いの文化をひもときつつ、古来の人々の考え方にも触れる。
≪今月の担当≫ ジュンク堂書店奈良店 社員 渡部大輔
みなさんは、[四知]という言葉をご存知でしょうか。
「天知る、地知る、我知る、汝知る」の、四つの知のことをいい、誰も知らないだろうと思っていても、隠し事というものは必ず、ばれてしまうという意味で用いられる言葉です。
この言葉は、私が好きな宮城谷昌光氏の小説、「三国志」の中で楊震という人物の逸話として出てきます。
10年近くたった今でも自分を正してくれる言葉として残っています。
こういった言葉との出会いが本を読む楽しさの一つなのかもしれません。
店頭で気になった本。買うか買うまいかで悩んだ時は、よほど高額でない限り購入することにしています。なぜならやっぱり欲しいと思った時に、いざ店頭に行ってみると次回入荷待ちになっていた、ということが2度や3度ではなく・・・
気になった時が買い時、というのがマイルールです。
◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆
啓林堂書店ホームページ・外商部ページ( https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/ )にて、更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!
おすすめ児童書
『わんぱくだんのりゅうぐうじょう』
【ひさかたチャイルド】
ゆきのゆみこ、上野与志/作 末崎茂樹/絵
けん、ひろし、くみ、3人そろえば、わんぱくだん。わんぱくだんが海で子がめを助けます。
次の日、大がめが現れて、子がめを助けてくれたお礼に竜宮城に連れていってくれます。どこかで聞いた話ですね。浦島太郎みたいに、わんぱくだんは玉手箱をもらって…
どうなっちゃうのか、先が気になって、どんどん読み進めたくなります。
外商部おすすめの奈良本
『たくましくて美しい 糞虫図鑑』
【創元社】中村圭一/著7月16日発売予定
日本には約160種類の糞虫が生息していますが、そのうち40種がいるといわれる奈良公園は「糞虫の聖地」と呼ばれ、神の使いである鹿が落としていく1日1トン(!)もの糞を聖なる糞虫たちがせっせと片付けています。幼い日、故郷の奈良で糞虫に出会って一目ぼれ、以来ずっと糞虫に夢中なフン虫王子こと「ならまち糞虫館」館長の中村圭一さんは、50代でついに脱サラして糞虫専門の博物館を建ててしまいました。本書は、そんな中村館長ならではの視点で読む人を糞虫の世界へと誘う、糞虫ガイドです。
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