時は7世紀。飛鳥の世に生きた一人の女、額田王は子まで成した大海人王子と別れ、その兄、葛城王子の仕切る宮城で、色を判じることができない眼の秘密を抱えながら宮人として勤めに邁進する。誰かの妻や母としてではなく、一人の人間として、歌詠みとして生きる道を模索するも、葛城の死、大海人の挙兵でその運命は一転する。大敗を喫した白村江の戦い、叔父・甥が争う壬申の乱…、動乱の飛鳥の世を生き抜いた、万葉の歌人の半生を鮮烈に描く。