1月号 2021.1.1啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/
あけましておめでとうございます。新年最初にご紹介するのは、『お探し物は図書室まで』(ポプラ社)。
本書に収録されているのは5つの短編小説だ。各章の主人公たちは、みなそれぞれに悩みを抱えているのだが、様々ないきさつから、町の小さな図書室を訪れることになる。
訪れた図書室で、まずカウンターの受付をしているのぞみちゃんに声をかけてみると、レファレンスは奥へどうぞ、と勧められる。案内された先に向かってみると、そこにはとても大きな司書の小町さんが。見た目はベイマックスのようと紹介されていたのだが、一体どんな人なんだろうと興味をそそられる。しかも小町さんは羊毛フェルトに没頭中。ちくちくと針を刺している姿が最初は不愛想で何だか話しかけづらい…だが、「何をお探し?」と小町さんに問いかけられて空気が一変。まるですべてを包み込んでくれるような不思議な声をしているのだ。利用者の要望を聞いた小町さんは、素早いタイピングで本を何冊かピックアップしていってくれるのだが、なぜかその中にはリクエストと関係のなさそうな本も入っている。小町さんの出してくれた選書のリストと「本の付録」(自分の作った羊毛フェルトのことを小町さんはそう呼んでいる)を受け取り、間違った本が入っているのだろうか、といぶかしみつつ本を探すことになるのだが…
小町さんのピックアップする意外な1冊は、いつも主人公たちに次の一歩を踏み出すきっかけと勇気を与えてくれる。だが、小町さんはいつも謙虚だ。本を読んだ人が自分で本からヒントや手掛かりを見つけている、というスタンスに好感が持てる。そして、そんな小町さんに感謝し、少しずつでも前に進もうと努力する主人公たちのひたむきな姿に何度も心打たれた。
作中に登場する羊毛フェルト、私も実際に作ってみたことがあるのだが、無心で針を刺し続ける作業は想像以上に根気がいる。自分の思う形になるまでに結構な時間がかかるのだ。だが、理想の形に少しずつ近づいていく面白さ、軌道修正をしたいと思った時に融通が利くところなどの魅力が羊毛フェルトにはあるように思う。そう、この物語に登場する悩める主人公たちの人生のように。
第1章に登場する意外な本は誰もが知る絵本の「ぐりとぐら」だった。物語でも触れられているが、読む人によって捉え方が違うと紹介されていたのが面白い。本書を読んだら、どんなお話の本だったかな? とぜひ自分なりに振り返ってみて欲しい。ただし、おなかが空いてしまったときはあしからず。その時は主人公のように自分でカステラを作ってみるのもいいかもしれない。
他の章に登場する意外な本も実在している本なので、気になったという方はぜひ巻末の【作中に出てきた実在する本】のページをチェックしてみて頂きたい。
疲れた心に勇気と希望を与えてくれる物語。少しずつ読もうと思っていたはずが、夜更かししてまで一気読みしてしまった。本が好きな方、本の仕事に携わる方は特に感じるものがあるはず。おすすめ!
「いまさら恐竜入門 」
【西東社】 近藤二郎/著
「図鑑の体色はどうやって決めているの? モフモフの恐竜がいたの? 恐竜が絶滅していないってホント?」
本書の「はじめに」で投げかけられるこれらの質問に、あなたは自信を持って答えられるだろうか。
恐竜には様々なグループがあり、また当然種によって生息していた時代も異なる。フィクションで度々戦う描写もされる恐竜。
だが、同じ白亜紀後期の恐竜でも数千万年単位で生息年代が異なったり、暮らしていた地域や環境が違っていたりするため、実際に戦っていた可能性のある組み合わせは意外と少ないのだそう。
いまさら聞けない恐竜の知識に加え、最新の研究成果も盛り込んだ一冊となっている。
様々な挿絵と漫画が添えられているのだが、ティラノサウルスの親子が特に可愛いので注目して欲しい。
≪今月の担当≫ 生駒店 店長 松井典子
最近、困っている。英国ミステリが面白くて。
元々海外もの…ミステリだけでなく、海洋文学・移民文学が大好物なのだが、今年はクリスティ生誕130周年の節目。新訳が多数出版されているから、ついつい新旧を読み比べたらもうだめで、沼にはまった。
クリスティから始まり、今は気になる現代作家に順番に手を出している。今しがた読み終わったものも面白かった、気鋭の作家のシリーズもの。あぁ、シリーズもの!冒頭に戻る。
…困っている。続きが翻訳されていない。続きを読みたくてソワソワする。どうしてシリーズものを選んでしまったのかと思うけれど、後の祭り。近い将来こっそりと洋書のお取り寄せをする自分の姿が目に浮かび、私は自室にそびえ立つ積ん読からスッと目を逸らした。
本屋という空間に行くと、時間が一瞬で過ぎ去ってしまいます。気になる新刊・話題書から始まり、自分の今興味のある分野など、棚を眺めだすときりがありません。楽しい時間はすぐ過ぎ去るとは、よく言ったものだなぁと思います。
◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆
啓林堂書店ホームページ・外商部ページ(https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/)にて
更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!
おすすめ児童書」「おすすめの奈良本」2月号は、1月下旬に更新予定です!お見逃しなく!
おすすめ児童書
『999ひきのきょうだいのおやすみなさい』
【ひさかたチャイルド】 木村研/文 村上康成/絵
かえるのきょうだいの一番の大きいお兄ちゃんは、秋になり寒くなって眠たくなってきてしまいました。
でもまだ雪が降る冬になっていないので寝ちゃだめなんです。だって弟たちは雪が見たいんです。
お兄ちゃんを寝かせないために弟たちはがんばります。さあ、みんなで雪が見れるかな。
お兄ちゃんの眠そうな目の変化にも注目です。
おすすめ奈良本
『ラストは初めから決まっていた』
【ポプラ社】 小手鞠るい/著 1月8日発売予定
岡大の教室から巣立って、聖徳太子ゆかりの地、奈良・王寺町へ飛んでいく。「恋人の聖地」で、ことりを待ち受けていたのは……
純度100%の恋愛小説に心ときめかせるだけでなく、仕掛けられた驚きのラスト。そして「書く」ということの意味。一気読み間違いなしの感動作です!
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