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漢字にまつわる話 2020.2.3

2月号 2020.2.3
啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/

漢字にまつわる話

 普段、私たちは日本語を書き表すのにひらがな、カタカナ、漢字を使い分けている。漢字を習い始めたばかりの頃は、ひらがなでも書けるのにどうして漢字まで、と少々恨みに思いながら覚えた記憶があるのだが、習得に努力が必要な分、漢字にはそれに見合った便利なところがあるのも事実である。

 そんな漢字にまつわる様々な話を収録したのが、今回ご紹介する『 漢字のいい話 』(新潮文庫)。著者は「新字源」の編者でもある阿辻哲次氏である。

 漢字のメリットとは何だろう。
 文字をすべてカタカナで表記する電報。一見しただけでは意味が分かりづらく、文面によっては複数の意味をもつ文章になり、相手に誤解を与えてしまう可能性がある。一方漢字はビジュアルが意味も伝えるため、ひらがなやカタカナのみで文字に書き表したときのような読みづらさを解消してくれる。読みと意味を同時に伝えるのが漢字なのである。
 もちろんカタカナにもメリットはある。こちらは音を表すのに適しているため、外来語を取り入れた際、すぐに文字にして書き表すことが可能だ。ではすべて漢字表記の中国ではどうしているのかというと、海外からコカ・コーラが取り入れられた際は、コカ・コーラの表記を公募で「可口可楽」に決めたのだとか。この他にも「魔術霊」・「剣橋大学」の例が紹介されていた。特に「魔術霊」は難問だと思うのだが、皆さんは読めるだろうか? 音と意味を踏まえた漢字が当てられており、なるほど、と思わず膝を打った。答え合わせは本書で。

 日本は中国から漢字を取り入れ、自分たちの文化に合わせて独自の進化をさせてきた。
 例えば「国字」。特に魚編は数が多い。国土の大部分を広大な大陸で占める中国は、河川や海に面する一部地域を除いて人々にはほぼ魚に触れる機会がなかった。これに対し、日本は島国で海に囲まれており川も多い。人々が魚に触れる機会も多かったため、豊富な魚の種類を区別する必要があった。結果、日本では魚の種類を表す漢字が数多く登場することになったのである。

 他にも興味深い漢字の歴史が紹介されているが、戦後訪れた漢字廃止の危機、そしてワープロとパソコンの影響は外してはならないだろう。

 現在日本では部首の「しんにょう」に点ひとつとふたつの区別がある。「謎」という漢字、あなたはどちらで記憶しているだろうか?

 文庫で決して分厚くはない本なのだが、中身は非常に濃厚で読み応えがある。コラムも面白い。「恭賀新年」の項目は特に驚いてしまった。「恭」の字に対する印象がおかげですっかり変わった。
 知ったそばから誰かにきっと話したくなる。まずは目次をチェック。興味のある項目から、じっくり読み進めていってみては?

<今月の私の一冊>

絵を見る技術 名画の構造を読み解く

【朝日出版社】秋田麻早子/著

教養として絵画を楽しみたいと思っても、どうやって絵画を見ればいいのか分からない。絵画は好きに見ればよいとも言われるが、時代背景や画家の意図を知らないよりは、知識があった方がいいのではと考えてしまう……
本書はそんな方に向け、絵画の読み解き方を指南してくれる。
序章の名探偵ホームズが「君は見ているが観察していない」と、助手のワトソンに指摘する一場面の引用が印象的だった。見ていたと主張するワトソンだが、ホームズの問いには答えられない。無目的にただ漠然と“見る”だけでは得られる情報はごく限られてしまう。目的をもって観察することが大事なのである。では、具体的にどこをどう見ればいいのだろうか。実はプロと素人では同じ絵画を見ると言っても目の動かし方が全く違っていたのである。
本書では論理的に絵画の構造を読み解き、絵画の紐解き方を学んでいく。疑問が解決していく爽快感、名画とされる絵画に備わる説得性。絵画を読み解くヒントがこの1冊に詰まっている。

ミニコラム「私と本」

≪今月の担当≫ 郡山店 社員 加川洋子

 新しい児童書と出会うと本を楽しむ前に、この本は主食かな?副食かな?おやつかな?と考えながら読んでいる自分がいる。ほとんど職業病だな…と苦笑してしまう。
 人の身体は主食、副食、おやつで育つ。そのバランスが大切でどれ一つ偏っても健康的に育たない。人の心もそうだろう。だから心を育てる本もバランスが必要。これが私の選書の基準である。
 店頭に並ぶ本の中でお客様に今必要な本を提供できる書店員でありたい…。時代遅れなのかな?最近悩んでいる。

Chat&Chat

 今年の冬は暖冬。おかげでいつもより読書がはかどっているような気がします。暖かい分、寒さで指がかじかみません。暖房のききすぎで眠くなることもありません。快適に読書ができ、少し得をした気分です。

◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆

啓林堂書店ホームページ・外商部ページ(https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/)にて

更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!

おすすめ児童書」「おすすめの奈良本」2月号は、1月下旬に更新予定です!お見逃しなく!

おすすめ児童書

 ちび竜 』【童心社】
工藤直子/文 あべ弘士/絵

 小さな粒から生まれたちび竜。水たまりから飛び立ち、いろいろな友だちと出会って遊んで、いろんなことを学びます。
 風や水や土とも仲良くなって、やがてでっかくなったちび竜は…。
 これから一歩を踏み出そうとするすべての人に贈りたい、いのちあふれる物語絵本。
 観音開きの大画面は迫力があります。

おすすめ奈良本
 カラー版 神社に秘められた日本書紀の謎
【宝島社】
小名木善行/著 2月26日発売予定

 2020年は、日本書紀編纂1300年!! 関連本や関連イベントなど、日本書紀に注目が集まることが予想されます。本書は、初心者にも手にとってもらえるように、徹底したわかりやすい言葉遣い、かつ写真も豊富に全ページフルカラーになります。また、古代史本読者へのニーズにも沿うように、こちらも古代史好きには人気のある古事記との比較を枕扱いとして、日本書紀に対する「謎」に対して、残された伝承や文化財などから紐解いていくというスタイルで構成しています。巻末には、関連する神社のガイドリストもつけることで、現地旅行の際のお供にもなります。

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