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文豪たちに親しみがわいてくる逸話集 2019.12.2

12月号 2019.12.2
啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/

文豪たちに親しみがわいてくる逸話集

 文豪と言うと純文学のイメージがそのまま作家に重なり、取っつきにくさや堅苦しさを感じる方もおられるだろうか。
 だが、今回ご紹介する『 文豪どうかしてる逸話集 』( KADOKAWA )を読むと、文豪に対するイメージががらりと変わる。有名どころから知られざる逸話まで、ざっくばらんに紹介される文豪たちの話はどれも一度読んだら忘れられない強烈なインパクトを放っている。

 「人間失格」「走れメロス」などで知られる太宰治は、芥川龍之介の熱烈なファンだった。自身の作品が初めて認められ、自信を得るきっかけとなった人物だからである。芥川の名前を冠するからという理由で、何としてでも芥川賞が欲しいと考えた太宰は、再三にわたり選考委員に直談判。受け容れられぬと選考委員に対するクレームを誌面に載せてしまうなど、少し行き過ぎた行動も起こしている。だが、敬愛する芥川は大量の睡眠薬を飲んで自殺してしまう。大きな衝撃を受けた太宰は、作家とはこうあるべきかもしれない、と自らも自殺を考えるようになったようだ。

 太宰に限らず、自身の作品を初めて認めてくれた先輩や大御所に、作家は行き過ぎとも言えるほど傾倒する傾向がみられるようだ。中には夏目漱石グッズコレクターの域にまで達したあの人物も。答え合わせは「第2章 夏目漱石一門と猫好きな文豪たち」で!

 ここまで紹介した「太宰治」「夏目漱石」などを軸に展開される交友関係は、各章冒頭に設けられた相関図で確認することができる。目を通して頂くと、よりエピソードが分かりやすくなるだろう。
 なお、冒頭紹介した太宰治の逸話は「第1章 太宰治を取り巻くどうかしている文豪たち」に収録されているのだが、太宰と大親友だった檀一雄には要注目だ。中でも「走れメロス」誕生のきっかけとなった話が面白い。「走れメロス」とは似ても似つかぬ話が飛び出し、よく友人関係が続いたものだと感心すらしてしまう内容になっている。なお、壇は“文壇の良心”と紹介されているが、太宰をはじめ、周りの作家の個性が強すぎるだけで、料理に異様なまでのこだわりをみせるところなどを見ると、やはり少し変わった人である。

 中でも私が特に気に入っているのは「森鴎外」の帽子の話。人並み外れて頭が大きく、中々サイズの合う帽子がなかった鴎外。だがプライドの高かった鴎外は店で「もっと大きいサイズをくれ」とは言い出せず、「もっと上等なの、ある?」と延々聞くことになり・・・
 どんどん帽子の値段だけが上等になっていき、一向に鴎外の求めるサイズの帽子は出てこない。もっと他に良い言い方があったのでは? と思ってしまうのだが、予想外の結末に思わずくすりと笑ってしまった。

 他にも、芥川賞・直木賞の創設者である菊池寛の意外な苦労話など興味深い話が多数紹介されている。読めば名だたる文豪たちにきっと親しみがわいてくる。

<今月の私の一冊>

戦国 忍びの作法

【G.B.】山田雄司/監修

忍者といえば黒装束で身を固め、敵と遭遇した際には十字手裏剣でかっこよく応戦、追っ手から逃れる時は竹筒で呼吸を確保しつつ水中に身を潜めたり、水蜘蛛で颯爽と水面の上をすいすいと渡る…そんなイメージがあるのではないだろうか。だが実はそのイメージ、間違い。後世に語られるようになった忍者の姿は当時実際に活躍していた忍者の姿とは異なる。装束も真っ黒ではなかった。また、忍者の代名詞である「分身の術」も実際どのように使われていた術なのかははっきりしていないそうだ。敵国に侵入し潜入捜査、必要があれば噂に乗じて情報を攪乱・操作、人の感情を巧みに操る「陽忍」。そして闇夜に紛れてお城に潜入、必要があれば暗殺も行った汚れ役の「陰忍」。いずれも幼少期から鍛えられ培われた、人並み外れた身体能力と専門知識によってはじめて成し遂げられる仕事だった。今まで知らなかったリアルな忍者像に迫る。有名な忍者の逸話も非常に楽しく読めた。おすすめ!

ミニコラム「私と本」

≪今月の担当≫ 生駒店 社員 小川岳志

 以前と比べると読書量は減ったが、前も今も読むのは単行本よりも文庫本の方が多い。それにはもちろん金銭的な理由もあるのだが、何よりもあのコンパクトなサイズが良い。読む時は手に収まり、長時間読んでいても手が疲れないし、鞄に入れて持ち運びもしやすい。本棚に並べた時の整った感じも良い。
 書店に立ち寄った時には買うつもりのなかった文庫本をつい買ってしまう。そうして日々着々と本棚に文庫本が増えている。

Chat&Chat

 最近めっきり肌寒くなってきました。
 夜寝る前はあったかい布団に入って読書をしているのですが、身体があたたまってくるといつの間にか眠っていることもしばしば。意識のあるうちにちゃんと栞を挟んでいる時はいいのですが、うっかりどこまで読んだか分からなくなってしまい、結局再読している、なんてこともしょっちゅうです。

 

★11/30に新大宮店がリニューアルオープンしました! 皆様のご来店をお待ちしております。

◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆

啓林堂書店ホームページ・外商部ページ(https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/)にて

更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!

おすすめ児童書」「おすすめの奈良本」1月号は、12月下旬に更新予定です!お見逃しなく!

おすすめ児童書

おじいちゃんがのこしたものは…』【評論社】
マイケル・モーパーゴ/文 ジム・フィールド/絵 佐藤見果夢/訳

 ミアにはとても大切にしている手紙があります。それは、おじいちゃんがミアにのこしたクリスマスプレゼントの手紙。
 毎年クリスマスになって、みんなでプレゼントを配り終わったあと、家族全員でこの手紙を読みます。そこにはかけがえのない地球、すべての生き物を愛おしむ温かさ・・・おじいちゃんの願いがあふれています。
 子どもたちへのメッセージが込められた絵本。

おすすめ奈良本
ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集
【徳間書店】 小名木善行/著  12 月 6 日発売予定

古典研究を通して日本論、日本人論が人気のねずさんによる、万葉集論。万葉の心がわかれば、本当の日本が見えてくる!

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